延暦寺の最期

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――― 蘭は目の前の光景が信じられなかった。建物は全て炎に包まれ、僧達の断末魔の叫びと読経の声が耳にまとわりつく。光秀や秀吉や他の家来の皆が、まるで化け物のように思えた。次々と首を跳ねていく姿に恐怖で足が動かない。 「そ、そうだ!早く蔵に行かないと!」 しばらく立ち尽くしていたがやっとの事で自分の任務を思い出した。蘭は誰もいないのを確認してから本堂の裏手へと向かった。 「ここだ……」 そっと扉を開けて中に入ってきょろきょろと周りを見回す。時間がかかるかも知れないと心配していたけど、案外簡単に見つかった。 「結構でかいな。よいしょっと。」 大きめの樽の中に酒は入っていた。だが大きいのは樽だけで中身は思ったより少ない。蘭は溢さないように注意しながら外に運んだ。 「えっと……まず蓋を開けるんだっけ。」 蝶子に教えてもらった通りに蓋を開ける。そしてしばらく放置した後、勢いよく燃えている本堂の近くまで移動させた。素早く離れる。 「よし。こうやって火の近くに置いておいたらその内引火して燃えるはずだって蝶子が言ってた。樽は木製だし大丈夫だよな。」 自分にそう言い聞かせながら様子を伺っていると、思った通り樽に火が移って燃え始めた。 .
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