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延暦寺の最期
―――
永禄11年(1568年)8月13日の未明。光秀率いる織田軍は比叡山へと向かった。
「向こうに着いたら蘭丸はすぐに蔵へ行け。柴田殿の話だとやはり酒はそこで保管されているそうだ。場所は本堂の裏手にあるらしい。明智殿に気づかれないように私が上手くやっておくからその間に探し出してくれ。」
「わかりました。あの~……その酒の事について信長様から何か聞いてますか?」
蘭は軍の最後尾を歩きながら隣にいる秀吉に聞いてみる。秀吉は蘭の方をちらっと見た後、遠くを見つめながら頷いた。
「飲んだ者が能力者になるという酒だと聞いた。そして一番最初に飲んだのが私の祖先かも知れないとも。」
「そう、ですか……」
それについてどう思っているのかを聞きたいと思った蘭だったが、聞ける雰囲気ではなかった。
「『瞬間移動』の力は気づいたら備わっていた。何もわからなかった頃は突然違う場所に移動している事を不思議に思ったよ。この力を初めて自分の意思で使ったのは八つの頃だったか。でもその時母に酷く叱られて、それ以来力を使う事はなかった。信長様に出会うまでは。」
「…………」
自分から話してくれた事に少し驚きながらも、蘭は秀吉の次の言葉を待った。
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