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飾り物の瞳に光
「野良猫がいけないのよ。あたしがバイクで颯爽と爆走してた最中に、あやつが『にゃあ』ってトボケタ鳴き声出しながら突っ切ってきて道路のど真ん中に座り込んじゃったんだから。そのまま轢いちゃったら気持ち悪いじゃない。第一、猫殺しちゃうのよ。これじゃ猫殺しよ」
顔面を白い包帯でコーティングされた少女は、白くて硬いベッドの上で、機関銃のように言いたいことをずばずばと口にする。
「それはカンベンって思って、車体を横に反らせただけなのに。運悪くガードレールにごっつん、よ。免許とったばっかだったのに、もう最悪」
巻かれた包帯の合間からのぞくアンバーの瞳は虚ろなまま、数度、瞬きを繰り返す。
面会謝絶の札が外れて一週間。脳挫傷、左手と左足首骨折、その他顔面などの擦過傷。それが彼女に下された診断だ。
彼女はもう平気だよ退院したって別に困らないわよと言い張るが、医者が駄目だと言うので仕方なく病室でおとなしくしている。
「ちょっと泰介聞いてる?」
「聞いてるよ。それで?」
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