後篇

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「わかるわよ? 少し濃いめにつくってもらったでしょ」 「……さすがですね、先輩」 「一年の差って、大きいの」  色合いくらいで見分けは付く。  このくらいの明るさの中で作った事は数知れず。  少しアルコール度数を高めにしてくれ、なんていうオーダーをしてくる男性が多いことだって、重々把握している。 「私を酔わせてどうするつもりだったの?」  冗談めかして続ける。 「別に私は、どちらでも構わなかったわけだけど」 「……そういうところですよ」 「え?」  私から視線を外し、カウンターテーブルを見つめながら、ヒナタは切なそうな声を出した。  長い付き合いの中でも、私が今までに聞いたことが無い色合いを含んだ声に聞こえた。 「え、どういうこと?」 「だって!」
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