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交代で入るクルーが向けてくる笑顔に似たような笑顔を向けながら、バックヤードへと向かう。だんだんと小走りのようになるのは、きっと自然なことだと思う。
見た目よりは軽い音がするドアを開けば――。
「ヒナタ、おつかれさま」
「……あ、おつかれさまです。ココ先輩」
彼女が、居る。
私よりわずかに早く上がっていた彼女は、ユニフォームを着たまま携帯電話を片手に空――窓の外を見上げていたが、私の声に顔だけでワンテンポ遅れて反応した。
またそうしてすぐに液晶画面に目を向けるのだろう。
いつものことだ。
こうされることくらい、あなたもわかっているはずでしょう?
――なんてことを、少しだけ思ってみたりする。
「ちょっ」
彼女の首筋に、わずかに一刹那触れるだけのキスをする。
そこが弱いことを知ったのは、私たちがまだ高校生だった頃だろうか。
いつも見せてくれる初々しいような反応が、かわいくて仕方がなかった。
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