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振り向いた彼女は、その大きな目をくりっとさせながら慌てている。明るいブラウンのショートヘアがふわりと揺れた。
「もうっ。いきなりですか?」
「カタいこと言わないのー」
たしかに、いきなりするのは久々だったけれど。
「きっちりあれこれ、準備しておきたいタイプだったかしら?」
「そういうことじゃなくてですね」
呆れが半分以上詰め込まれたような顔を向けられる。
「大丈夫よ。他の人はいないから」
「だからぁ、そういうことでもなくてですね?」
口調は怒っているようだし、眉間にしわなんて刻んでいる。
だけど、平静を装っているその耳の端は、いつもより赤く見える。
この部屋の照明はほんのり電球色になっているけれど、それよりも濃い色に染まっているようだった。
きっとこれは、私の贔屓目がそう見せているわけじゃないと思う。
「まぁまぁ、とりあえず落ち着いて」
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