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前篇
「ふぅ……」
ちょうどお客様の流れも途切れた、カフェスタイルのバー。
お昼とされる時間はコーヒー系をメインに、夜とされる時間帯はお酒をメインに提供するスタイルのコーナーだ。
カウンターのやや奥まったところで、鋭く、だけど小さく一息つく。
傍からは気づかれない程度に背筋を伸ばしてみれば、関節も何度かぱきぱきと一心地つくような音を立てた。
かれこれ一週間もこうしていれば、朝も昼も夜もよくわからなくなってくるものだ。
それはこうしてカウンターの内側にいる私もそうだし、もちろんここにやってくる人たちもそうだろう。眠たそうにしていながらも、その瞳の奥は何かを期待しているように輝いて見えるのだ。
ふと上を見上げれば、連絡船の天井に付けられた窓から見える月が、だいぶ大きく見えるようになっていた。
もうあと七時間も経てばあの星へと到着するだろう。
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