一話 業火の砂漠

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一話 業火の砂漠

   6時間歩いた。しかし人の気配がするどころか、上を飛び回るハゲワシの群れを除き、生物の気配すらしない。サンティの奴は俺がシビレを切らしていることに気づいているようで、こちらの様子をたびたび伺っている。俺は賞金稼ぎで、奴はそのことを知っている。もし俺を怒らせれば、自分もさっきの看守と同じ目にあうのではないか…と思っているだろう。  想像を確信にするため、反応を確かめることにした。  「サンティ」  「ひっ!…はい?」  奴は分かりやすいまでの露骨な反応を示した。しかし俺は奴についてきたことに後悔はしていない。もちろん奴に対しての怒りもない。奴が適当なことを言ったのはハナからわかっていたからだ。人間の鼻が犬のように効くはずなどないだろう。  しかし俺の疲れはそろそろ限界だった。脳裏によぎった言葉が自然に出る。  「__少し休みたい。疲れた」  「わ…わかった。ここにちょうど良い岩場がある。少し休もう…」  俺たちは岩場に座り、その場に重々しく座り込んだ。疲労が溜まりきった重い体が地面につくと、その重みで砂塵が舞う。残酷なことに日陰は少なく、一向に日差しも弱まる気配はない。喉の乾きも限界に近くなってきた。
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