一話 業火の砂漠

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 一瞬、あたり一面に竹が割れるような軽い破裂音が響いた。しばらくしてもう一度同じような音が聞こえたが、その前に風切り音を伴っていることがわかった。  そして三発目、俺たちの休んでいた岩に”それ”は突き刺さった。  弓矢だ。俺たちは何者かに狙われている。鏃の周りの硬い岩がジュルっと音をたてて溶けた。毒矢だろうか?硫酸のようなものを塗っているに違いない。  「オイオイオイ冗談じゃねーぜ?ここまできて匪賊どもの襲撃か?もう戦う力すら残ってねー…」  「こっちに行こうといったのはお前だろう」  「…ま…そうだけどよ」  俺とサンティはすぐさま銃を構える。岩場の影から何者かが近づいてくるのがわかった。  「へへっ…このご時世に弓使いなんて時代遅れなやつ。この文明の利器で吹き飛ばしてやるぜ」  威勢よくライフルを取り出したサンティは岩場の影からスコープを覗き込んでいる。しかし数秒後、奴の顔は青白く豹変をした。  「お!おい!なんだよあれ!?」  「大声を出すな。見せろ」  サンティが顔を青白くしていたのも理解ができた。  凄まじい砂煙をたて、鉄製の車輪のような物体がこちらに向かって転がってくる。高さ2メートルほど、横幅は1mほどの物体だ。大きさはそこまでだが、その勢いは大きさ以上に巨大に見えた。
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