一話 業火の砂漠

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 俺たちはアルマジロの尻尾に引きずられるような形になり、地獄のようなハイキングを再開する。しかし親切なことに女から一杯の水をもらったことで幾分かマシになったし、サンティがわめくたびに女はアルマジロを静止してくれた。しかし俺はまだこの女を信用したわけではない。砂漠や森にはカニバリズムの連中が集まり、旅人や運送業者に近づくのだという。親切にして油断させたところを後ろから喰らうのだ。不足の事態に備え、俺の意識は何分に一度腰元のデリンジャー向かった。  3時間ほど歩き、空は深紅の夕日が照らし出していた。そろそろ肌寒くなってくる頃だ。  「着いたわ」  女はそう言ったが、前には変わらず鏡のような砂漠の地平線と巨大な砂の山が広がるだけだ。  「おいおいおい?どこに着いたっていうんだよ」  そう騒ぎ立てるサンティを無視し、女は訳のわからない言葉を叫んだ。  すると目の前の砂の山から突如扉が現れ、開閉した。開閉する際に、砂がこぼれ落ちて埋もれることはなかったので、周りの砂はダミーであることがわかる。
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