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トラックの下には先客が一人いた。俺は人差し指を立てる。そいつもそれを見て頷く。
しばらく様子を見て…
三人目の足元に一発、ぶっ放してやった。
「チキショォォぉぉぉ!!」
三人目の足は吹き飛び、弱々しい叫びと共に地面へと倒れ込む。それに呼応し、血の匂いに敏感なハゲタカの群れが奴の肉を蝕むため、一斉に集まってくる。
「た…たすけ…ぇぇぇぇ」
悲惨な断末魔が鳴り響いた。しかし、それも長くは続かない。火星のハゲタカというものは生の肉が大好物だから、奴の体はすぐさま白い骨だけになってしまった。
ようやく全員倒した…。おおかたもう片付いたと安心したのも束の間のこと……。
「死ねよクソ野郎」
「う!?」
妙な殺気が立ち込めていると思ったら、一緒に隠れていた隣の野郎が急に襲いかかってきた。こいつは輸送者側が入れ込んだスパイだったのだ。
俺は野郎の両手首を握り締め押さえることで、精一杯にナイフが体に触れるのを阻止する。しかし今の状態は格闘技でいうところのマウントポジション。上にいる野郎が圧倒的有利、下にいる俺の絶対的不利は変わらない。
「お前の言う通りに俺は何も言わなかったぞ」
野郎のナイフはじわじわと俺の喉元に近づいている。これはまずくなってきた…。
俺と野郎は組み合いになり、三度ほどトラックの下で回転する。回転のたびに、ナイフがどんどん俺の体へと近づいてくる。不運にも三回目の回転の後に看守は再び上になった。ナイフと身体の距離は2mmほどしかない。
「ここまでだ!」
奴は一気に体重をかけ、俺の胸にナイフを突き立てる。
「うぅ…!」
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