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「なんだこれは…!?ロープ??」
絶体絶命かと思った矢先、俺はスパイ野郎の手首に何かが引っかかっているのを見た。紛れもなく、これは縄だ。しかし四方を塞がれたトラックの下で、いったいどこから投げ入れたと言うんだ?
投げ入れるとしたらトラックの外からしかないだろう。トラックの下に縄を投げるだけでも難しいのに、そこで殴り合いをしている人間の手にピンポイントで引っ掛ける。見事すぎる腕前だ。もし手ではなく足に引っ掛けていえば、腕のナイフは重力に従って下にいる俺に刺さってしまう。それを見越して投げ手はスパイ野郎の手首に縄を引っ掛けたのだ。
四人目のスパイ看守は情けない声を出し、トラックの下から外へと引きずり出された。すぐさま銃声が響く。始末されたのは奴の方に違いない。
トラックの外にいたのは輸送中におしゃべりをしていた、うるさい野郎だった。
「…お前だったか。感謝しよう」
「こちらこそ。エイル・フォッシャー。会えて嬉しいよ」
「なぜ俺の名前を」
「匪賊ごろしのエイル…そこそこ名の知れた賞金稼ぎだろう。なんでお前ほどの男がここにいるのか」
「お前には関係のないことだろう…」
「ヘヘッ。まあどうでもいいんだがよ。なぁ、オレと組まねぇか?? 」
おしゃべり野郎は馴れ馴れしく肩を組んでくる。助けてくれたことに感謝はするが、こう言う奴にはペースを乱されるので最も苦手なタイプだ。
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