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「手をどかせ。俺は誰とも組むつもりはない」
「まぁ、そう言わずによ。それにしてもオメェいい腕だな〜。クソッタレの看守がおっ死んだのを見てせいせいしたぜ。」
「褒められて嫌な気はしないが…お前こそ。見かけによらず大した腕だ…。シャバでは何をしていた?」
「牛泥棒。ただどう言うわけか死刑囚を載せるトラックに積まれてしまった。ひどい間違いだと思わねえか?」
この星では裁判制度はお飾りなので、牛泥棒だろうが人殺しだろうが罪の重さは法執行官の匙加減で決まる。こいつは気まぐれで死刑判決を受けてしまったのかもしれない。気の毒なやつだ。
「そうか…それは災難だったな。だけど助かって良かったじゃないか」
「お前のおかげでな。だがお前も俺のおかげで助かった。お互い様だろう。」
恩着せがましいやつでもある。しかし、悪いやつではなさそうだ。こいつからは不思議と一切邪気というものが感じられない。
「サンティアゴ・セルバンテスだ。サンティと呼んでくれて構わないぜ」
サンティは猿のように軽快な動きで動きですぐさま看守たちの持ち物を物色し始めた。
「エイル、さっさと鍵をかっぱらって近くの街までずらかろうぜ。追手が来ていたら厄介だ」
俺が今持っている鍵は一人目の豚看守から奪い取った後部輸送車の鍵のみ。運転席の鍵は、運転手である他のやつが持ってるはずだ。そうなると俺が殺った三人目の看守になるだろう。
俺はハゲタカに綺麗サッパリ肉を食べられてしまった三人目の屍を探す。しかし残酷にも見つかるのは骨だけだ。
「鍵がないだと……」
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