ブランドもののバッグ

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 まあ、昨今は画像処理ソフトでみんな同じような顔にしてしまってるんでわかりませんけどね。だけど、その女性の写真を見ていても、自然とあのキャバ嬢に感じたのと同じ強い怒りが湧いてくるんです。  それにそのIDの名前も、あのキャバ嬢の源氏名とどうも似てるんですね。アルファベット表記なんでまったく同じじゃあないですし、源氏名をそのままIDに使うようなこともないような気がしますがね。  でも、さらにその出品者、A子さんの買ったもの以外にも、どうやらブランド品を大量に出品してるようなんですよ。しかも頻繁に。  ブランドは一つのところだけじゃなくいろいろとあって、あのショルダーバッグほどの破格の値段ではないんですが、やっぱりみんな手が出せるくらいのお値段なんです。  ブランド品の卸売り業者とか、そうして割安で商品を手に入れられるような人間が、わけあり商品なんかをこっそり出品してるって可能性もないわけではないでしょうけどね。  だけど、そうでなかった場合に考えられるのが、やっぱり水商売系の女性ですよ。お客からよく高級ブランド品を貢がれるような人気のキャバ嬢だったら、そんなにたくさんあっても使わないし場所をとるだけなんで、捨てるのももったいないし、質屋に持っていくかフリーマーケットサイトで売りに出すのがまあ、常套手段でしょうからね。  もし、A子さんの推測どおり、この出品者があのキャバ嬢と同一人物だとしたら、あのショルダーバッグが自殺した客のプレゼントだったってことも充分考えられます。  そう考えると、なぜあんな破格の値段だったのか? その理由もなんとなくわかる気がしますよね。  使わないからいらないってのもありますが、自殺した客からもらったプレゼントなんて、手元に置いておくだけでも嫌ですからね。なるべく早く手放したいと思うのが人情ってもんでしょう。  おそらくですけど、男がプレゼントしたブランド品はあのショルダーバッグだけじゃなかったでしょうから、A子さんは見なかったんですが、他にもいろいろ破格の値段で出品されていたかもしれませんね……。  他のブランド品を購入した人達はどうだったんですかねえ? やっぱりA子さんみたいに怒りっぽくなったり、気がつくとあのキャバクラの前に立ってるなんてことがあったりなんかしたんでしょうか?  あのキャバ嬢の身に、何か大変なことが起こる日も近いかもしれませんね……。                 (ブランドもののバッグ 了)
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