小指サイズの君

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 ぎゃあぎゃあといつまでも喚くので、仕方なくつまんで肩に乗せる。 「じゃ、行きますか」 「どこにだ!」 「病院」 「なんの?」 「私の眼科」 「お前の目がおかしくなったんじゃなくて、俺が小さくなったんだよーー!!!!」  夫は渾身の力を振り絞って叫ぶ。さすが大阪出身、ツッコミは健在のようだ。 「冗談だよ」 「冗談に聞こえねえよ!」  叫んで疲れたのか、私の肩にちょこんと座りこむ。  30も超えた男に『ちょこん』なんて擬音が似合う時が来るとは思わなかった。時代は変わったものだ。
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