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 カーテンの隙間から朝日が射しこんでいる。鳥の囀りが聞こえて来て昨日見た嫌な夢など吹き飛ぶようだ。一月だから日の出が遅い。でも今日は朝練がいつもより遅く始まる。僕はパジャマからシャツとパンツに着替えた。シャツの上には刺繡が入ったカーディガンを羽織る。部屋にはベッドとガラステーブルがあってクローゼットは備え付けだ。この二階建ての広い家は小学校五年のときに出来た。お父さんが埼玉県の北部にある先祖代々の土地を売ってそのお金で建てたものだ。一階に和室が二つあってリビングとオープンキッチン。二階には部屋が三つある。僕は一人っ子なのでお父さんが二階の一部屋を書斎に使っている。  僕は一階に降りて顔を洗って歯を磨いた。鏡で自分の顔を見る。男なのにちょっと女っぽい。色は白いし頬が丸い。もっとガタイのいい作りのほうが良かったが女の子にはモテているようだ。去年は三人に告白された。いずれも丁重に断ったが、友人の間からは意味が分からないと言われた。でも女の子には興味がない。だって僕が好きなのはバスケ部の晴臣先輩なのだから。
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