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※R18表現を含みます。
キスにキスを重ねる。
一度触れたら、止まらなくなった。自分の呼吸と数真さんの呼吸とが、不規則に重なり合う。
僕の耳の縁をなぞっていた数真さんの手が、うなじをたどり、後ろ髪を押さえるように止まった。
――え。
いきなり頭を固定され、戸惑って少し開いた唇を割って、熱い舌が口内に差し込まれた。
びくりと身を引いたが、がっちりと頭を押さえられて逃げられない。その間にも、容赦なく舌の輪郭に沿ってなぞられ、重ねられ、絡み合って、吸われる。
混乱して、急速に呼吸が苦しくなる。
以前、キスは苦手だった。
生々しくて、唇が触れるだけでも嫌で、まだ体をつなげる方がドライに割り切れた。元々、その日の宿のため、寂しさを埋めるための代償の行為だったから、そこには、気持ちなんてなかった。
でも。
数真さんとは、違う。
大好きで、欲しくて、欲しくて、欲しくて。
翻弄されても、必死にしがみついて、数真さんについていくしかない。
こんな、自分を丸ごと喰われてしまうようなキスなんて、知らない。
数真さんは口内を存分に貪った後、僕を向かい合わせに座らせた。足を開いて数真さんをまたがる形が恥ずかしくて、俯いてしまう。
白濁した湯の中で、下腹部がすでに形を変えていた。
しょうがない。僕は、数真さんが好きなんだから――隠しようもなく、昂っている。
「もっと、近くにおいで」
水の中は軽くなるとはいえ、数真さんにあまり体重をかけたくなくて、少し身を引いていたのに、腰を合わせるように、ぐいと引き寄せられた。
互いの立ち上がるものが緩く触れ合う。それだけで、また体温が上がり、顔が火照る。
耐えきれず、息を吐くとあり得ないほど甘く響いて、耳を塞ぎたくなった。
抱きしめ合いながらキスを繰り返す。止まらない。
数真さんの髪をかき混ぜて、裸の肩から背のラインを手のひらで感じる。こんな風に触れられないと思っていた。
――好き。
言えない気持ちは、身体で伝えるしかない。
数真さんの指が僕の胸を這う。すでに立ち上がっていた頂きを軽く摘ままれただけで、痺れるような感覚が広がる。
「……んっ……」
指でこすられ、反対側を口に含まれた。舌で愛撫されると、下半身にも甘い疼きがぶわりと湧き起こる。
「…あっ……ん……」
声が、止まらない。
手で口を覆う。無理だ。抑えられない。
こんなに敏感だったっけ――なんて考える余裕もなく、快感が脳髄いっぱいに広がっていく。
胸を離れた数真さんの手が、僕の屹立したそれを握り込んだ。
「はぁっ……だめ、それ、無理」
「奏太」
名を呼ばれ、至近距離で合わせた視線。
見たことない数真さんがいた。
完全に、雄、だった。普段の穏やかな優しさの奥の、ぎらついた捕食者のまなざし。
この人に抱かれたい――強烈に思う。
大きな手で扱かれて、もう何が何だかわからなくなってきた。
勝手に腰が揺れる。
白濁した湯も揺れる。
急速に高まっていく感覚の先に、頂点が見える。
「や……、数真さん、いくっ……出ちゃうからっ……」
「いいよ、出して」
低音が、耳元で響く。数真さんの声は、簡単に自分を操る。そんなことを言われたら。
限界を超えた僕は、体をこわばらせ、欲情を湯に放った。
くたりと、身を数真さんに預ける。
「…お湯、汚しちゃった……」
「どんどん新しい湯が流れていくから、大丈夫だよ」
「でも。数真さんにもついちゃう…」
「いいよ。奏太のだから」
目を合わせて、数真さんが僕の中を覗き込む。
「奏太の全部が欲しい」
出したばかりなのに、ぞくりと背筋を快感が走り、反応してしまう。
「…うん」
「いい?」
「僕も。数真さんの、全部が欲しい」
噛みつくように深いキスが降って来た。
互いの手が、互いの体を確かめるように激しくまさぐる。
全部、とか。言葉遊びだとわかってる。
あと3日たったら、赤の他人に戻る。
恋人には、なれない。
本当に手に入れられるわけもないのに。
今だけ、恋人のように互いの全てを与えて、全てを受け入れて。
先は、ないのに。
馬鹿だ。
何をやってんだろう。
でも、止まらない。
泣きたいけど、泣けない。
数真さんは、唇と指先で僕の体を拓いていく。
快感だけに支配されて、白濁した湯の中で喘いで、また蕩かされていく。
「…っん……ん……う……」
手で口を覆っても、くぐもった声がひっきりなしに、上がる。
「外じゃ、やだ……部屋に、行きたい……部屋で、したい」
僕の懇願に、数真さんはキスで応えてくれた。
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