4週目~臨界点

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※R18表現を含みます。 キスにキスを重ねる。 一度触れたら、止まらなくなった。自分の呼吸と数真さんの呼吸とが、不規則に重なり合う。 僕の耳の縁をなぞっていた数真さんの手が、うなじをたどり、後ろ髪を押さえるように止まった。 ――え。 いきなり頭を固定され、戸惑って少し開いた唇を割って、熱い舌が口内に差し込まれた。 びくりと身を引いたが、がっちりと頭を押さえられて逃げられない。その間にも、容赦なく舌の輪郭に沿ってなぞられ、重ねられ、絡み合って、吸われる。 混乱して、急速に呼吸が苦しくなる。 以前、キスは苦手だった。 生々しくて、唇が触れるだけでも嫌で、まだ体をつなげる方がドライに割り切れた。元々、その日の宿のため、寂しさを埋めるための代償の行為だったから、そこには、気持ちなんてなかった。 でも。 数真さんとは、違う。 大好きで、欲しくて、欲しくて、欲しくて。 翻弄されても、必死にしがみついて、数真さんについていくしかない。 こんな、自分を丸ごと喰われてしまうようなキスなんて、知らない。 数真さんは口内を存分に貪った後、僕を向かい合わせに座らせた。足を開いて数真さんをまたがる形が恥ずかしくて、俯いてしまう。 白濁した湯の中で、下腹部がすでに形を変えていた。 しょうがない。僕は、数真さんが好きなんだから――隠しようもなく、(たかぶ)っている。 「もっと、近くにおいで」 水の中は軽くなるとはいえ、数真さんにあまり体重をかけたくなくて、少し身を引いていたのに、腰を合わせるように、ぐいと引き寄せられた。 互いの立ち上がるものが緩く触れ合う。それだけで、また体温が上がり、顔が火照る。 耐えきれず、息を吐くとあり得ないほど甘く響いて、耳を塞ぎたくなった。 抱きしめ合いながらキスを繰り返す。止まらない。 数真さんの髪をかき混ぜて、裸の肩から背のラインを手のひらで感じる。こんな風に触れられないと思っていた。 ――好き。 言えない気持ちは、身体で伝えるしかない。 数真さんの指が僕の胸を這う。すでに立ち上がっていた頂きを軽く摘ままれただけで、痺れるような感覚が広がる。 「……んっ……」 指でこすられ、反対側を口に含まれた。舌で愛撫されると、下半身にも甘い疼きがぶわりと湧き起こる。 「…あっ……ん……」 声が、止まらない。 手で口を覆う。無理だ。抑えられない。 こんなに敏感だったっけ――なんて考える余裕もなく、快感が脳髄いっぱいに広がっていく。 胸を離れた数真さんの手が、僕の屹立したそれを握り込んだ。 「はぁっ……だめ、それ、無理」 「奏太」 名を呼ばれ、至近距離で合わせた視線。 見たことない数真さんがいた。 完全に、雄、だった。普段の穏やかな優しさの奥の、ぎらついた捕食者のまなざし。 この人に抱かれたい――強烈に思う。 大きな手で(しご)かれて、もう何が何だかわからなくなってきた。 勝手に腰が揺れる。 白濁した湯も揺れる。 急速に高まっていく感覚の先に、頂点が見える。 「や……、数真さん、いくっ……出ちゃうからっ……」 「いいよ、出して」 低音が、耳元で響く。数真さんの声は、簡単に自分を操る。そんなことを言われたら。 限界を超えた僕は、体をこわばらせ、欲情を湯に放った。 くたりと、身を数真さんに預ける。 「…お湯、汚しちゃった……」 「どんどん新しい湯が流れていくから、大丈夫だよ」 「でも。数真さんにもついちゃう…」 「いいよ。奏太のだから」 目を合わせて、数真さんが僕の中を覗き込む。 「奏太の全部が欲しい」 出したばかりなのに、ぞくりと背筋を快感が走り、反応してしまう。 「…うん」 「いい?」 「僕も。数真さんの、全部が欲しい」 噛みつくように深いキスが降って来た。 互いの手が、互いの体を確かめるように激しくまさぐる。 全部、とか。言葉遊びだとわかってる。 あと3日たったら、赤の他人に戻る。 恋人には、なれない。 本当に手に入れられるわけもないのに。 今だけ、恋人のように互いの全てを与えて、全てを受け入れて。 先は、ないのに。 馬鹿だ。 何をやってんだろう。 でも、止まらない。 泣きたいけど、泣けない。 数真さんは、唇と指先で僕の体を拓いていく。 快感だけに支配されて、白濁した湯の中で喘いで、また蕩かされていく。 「…っん……ん……う……」 手で口を覆っても、くぐもった声がひっきりなしに、上がる。 「外じゃ、やだ……部屋に、行きたい……部屋で、したい」 僕の懇願に、数真さんはキスで応えてくれた。
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