4週目~臨界点

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※R18表現を含みます。 湯から上がり、数真さんに体を拭かれながら、立ったまま身体中にキスをされる。 恥ずかしさに身悶えすると、腰を押さえ込まれ、性器を口に含まれた。 「…っ!!」 一度出したのに、すでに立ち上がるそれを舐められ、くびれをなぞられると、腰がいやらしく揺れるのが止められない。 板の間に掛けられた鏡に映る自分のあまりの姿に、目を逸らす。 「…イヤか?」 僕は首を横に振る。 違う。イヤなんじゃない。 好きでたまらない人に、そんなことをされて、恥ずかしさとそれを上回る快感に、心が振り切れる。 立っていられなくなって数真さんにもたれると、両足を掬われて横抱きにされ、そのままベッドへと、もつれこんだ。 覆いかぶさるようなキスを繰り返されて、いったん冷えた肌の温度がまた上がっていく。 数真さんが欲しくて、数真さんに奪って欲しくて、舌を絡めて、数真さんに覆われて、手足も絡めて、皮膚の境界が融けかけた頃。 潤滑剤をたっぷりまとった指が、後ろへとゆっくり入れられた。 「……んっ……」 「大丈夫…?」 僕がうなずくと、指先で中を探られた。 ぬるぬるとしたものを外にも中にも塗り込められ、探り当てられた一番感じるところを容赦なく刺激されると、視界が白い閃光で()ぜた。 はくはくと口で浅く呼吸する。 だめ、もう、無理――そう言っても、数真さんはやめてくれない。 自分の先走りはずっと溢れっぱなしで、後ろへと滴り落ちるところに潤滑剤も足されて、もうぐちゃぐちゃだ。 ――欲しい。 こんなに後ろに欲しいと思ったのは、初めてだった。 「…入れて。数真さんの、欲しい……」 素直にねだる言葉が、自然と口をついて出た。甘ったるくて、本当に恋人みたいだ。瞼の裏で、涙がじわりと盛り上がったが、こらえる。 「奏太…」 両方の膝裏を開くように押し上げられる。 数真さんの眼前にさらけ出される光景を思うと、超絶恥ずかしいけれど、その恥ずかしさに反応して、性器の先端から先走りがまたとぷりとこぼれた。 恥ずかしいくせに、ものすごく感じていて、そんな自分を大好きな人が貫こうとしている。 全身が震えるほど極限状態で、たぶん数真さんが入って来たら、僕の身体は形を保っていられずに崩れ落ちてしまうんじゃないか―― なのに。 「数真さんの…入れて……早く……」 僕は、せがむ。 数真さんが目を(すが)めた。 「…奏太、あんまり煽るな」 極甘のキスをくれた数真さんが、僕へと身を沈めた。 丹念に指でほぐされたそこは、吸い付くような甘い水音を立てて、数真さんを飲み込んでいく。 散々研ぎ澄まされた快感は、今まで感じたことのない疼きとなって、腰から背筋を通って全身へと広がっていく。 ゆっくりと、抜き差ししながら、奥へ、奥へ。 太い根元まで全部沈めると、数真さんは、深く息を吐いた。 潤滑剤を足される。一瞬ひやりとして、すぐに、体温に馴染んで僕と数真さんにねっとりと絡みつく。 ぐっと奥を突かれて、また浅いところまで引いては、また。 まるで打ち寄せる波のようで、その波に揺らされながら、途中どうにも敏感な部分を刺激されて声が止まらない。 ぐずぐずに熟した果実が自らはじけて甘い汁を滴らせるように、僕の先端からも絶えず透明な蜜が零れ落ちる。 つながる部分にまで濡らしては、突かれるたびに、ぐちゅ、ぐちゅ、と淫靡な水音を立てる。耳からも犯されるみたいで、神経が炙られるようにひりつく。 「奏太…」 数真さんが腰を打ち付けながら、僕の名を呼んだ。その低く甘い響きの切なさに、涙が零れそうになる。 好きな人とのセックスがこんなに気持ちいいものだと、知らなかった。 怖いくらい気持ち良くて、どこを触れられても感じてしまい、その切ない快感に身をよじる。 両足を大きく開かれて、無防備に身体の真ん中で立ち上がる僕の性器を、数真さんは扱く。どうすると僕が感じるか、数真さんには手に取るようにわかるんだろう。先走りの溢れる鈴口を親指でいじられて。 「…あっ、……いくっ……」 また、かすかに吐精した。 出ないと思ったのに。ずっといきっぱなしのようで、もう何が何だかわからない。身体は弛緩するのに、快感の潮は引かない。 深いキスに舌を絡ませ、足を数真さんの腰に絡ませ、全身を重ねて深く繋がった。      ◇◇ 「奏太…俺のこと、好き…?」 奏太の中に深く身を沈めながら、ふと口を突いて出た言葉。 奏太は、息を詰まらせた。 何も言わないまま、両目から透明な涙がぼろぼろ零れ落ちた。 「好き…大好き…数真さんのこと、好き……」 引き絞るように、奏太は呟いた。 訊いてはいけない言葉だったと、後悔しても遅い。 「ごめん。……俺も、好きだよ」 キスをしながら、返す。 先のない自分たちには、気持ちを確かめても、意味はない。 想いが通じて、恋人になれるわけでもない。 ただ、今夜の行為が互いの想いから生まれたものだと、気持ちの奥底から互いを求めていたとわかるだけで、何かの救いになるだろうか。 もう、いいんじゃないか―― もう、大丈夫じゃないか―― これだけ愛おしく想い、自分を想ってくれる人の手を取っては、だめだろうか。そう考える自分もいる。 だが。 二度と繰り返したくない過去が、再び鎌首をもたげて来ないとは、誰も保証できない。もしそうなったら、確実に奏太を巻き込むことになる。 母も、弟も、失った。 好きだからこそ、自分は奏太から離れていなければならない。 奏太には、心から、幸せになって欲しいと思う。 奏太のことを大切に想う誰かがずっと傍にいて、寂しがりやの奏太を幸せにしてくれることを祈る。 俺は、その二人の姿を冷静に見ることはできない。恐らく、醜く嫉妬するだろう。 だから、3日後別れたら、もう奏太を追うことはない。 どこかで幸せになってくれることを、願うだけだ。 奏太が両手を伸ばして、キスをせがむ。 今夜だけの恋人がかわいすぎて、愛おしすぎて、何度も深くキスをする。 そして、自分とつながった細い腰を掴み、自分を焼き付けるように奏太の最奥をこねるように突くと、奏太も応えるようにぎゅうっと俺を締め付けた。
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