第1話 別れ話は屁理屈ばかり

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第1話 別れ話は屁理屈ばかり

「...だから、もう無理なんだよ...」 消え入りそうな、泣きそうな声で彼はそう言った。 萩原 海斗こと、「カイ」とは付き合って3年目の記念日を迎えたばかりだった。 ずっと幸せで順調だったはずなのに。こんなにもあっさりと別れがくるとは考えてもいなかった。 「...嫌だよ。」 一応抵抗して私の意思は伝えてみたものの、彼が1度こうと決めたら絶対に揺るがないタイプの人間だということは私が1番よく分かっていた。 「愛してる。本当に。本当の本当に。 でも、このまま、今のままでいて、俺自身のことも哀ちゃんのことも嫌いになりたくない...」 最後まで、自分本位でしか考えてくれない男だなぁ、なんて頭の端で考えてみたりもしたけれど、やっぱりそんな理由で自分の気持ちを割り切ることなど出来なかった。 それでも。 「...分かったよ。分かってないけれど、分かった。もう、大丈夫だよ。」 「うん...ごめん...」 きっと私の言った言葉の意味も理解していない癖に謝らないで、泣かないで。喉元まで出てきた言葉をグッと飲み込んで立ち上がった。 「じゃあね。」 荷物をまとめてすぐに家を出た。 このままだときっと泣き崩れてしまう。 泣いて、嫌だ、別れたくない、と彼に懇願してしまう。 縋り付くなんてみっともないこと...と思った時点で 「そういう所が、可愛くないのね」 と思わず口に出してしまっていた。 良かった。彼に聞かれずに済んで。 帰りの車では泣いて泣いて運転などできる状態ではなかった。どうやって家にたどり着いたのかはもう覚えていない。
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