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第2話 忘れられるなら何でもするのに
カイと別れて丁度1年が経った。
私はまだ、あの日のこともカイのことも忘れられないでいる。
「もういいじゃんか~!カイくん確かに格好良かったけどさ、何がそんなに好きだったのよ。」
大通りにあるカフェの日当たりのいい一番端の席に座っている、親友の浅霧 舞 はシレッと笑い飛ばしてそう言ってみせた。
くそぅ、人の気も知らないで。
と思って一応舞を一瞬睨みつけてはみたものの、やっぱりやめた。自分でも分かっているのだ。
1年も経った今、まだ忘れられないのは私なのだから。
「...分かってるわよ。でも今でも美味しいもの食べた時に教えてあげたいのも、どこか行った時にまた一緒に来たいって思うのも、やっぱりずーっとカイなんだもの...!ねぇ、私やばいかな?やばいかなぁ...」
自分で口に出した癖に余計に考えてしまって馬鹿馬鹿しくなる。
「.....やばいわよ、十分。」
冷ややかな目でこちらを見ながらコーヒーを啜る舞はやっぱり美人だなぁ、なんて思う。
実際、私だって何時でもどこでも四六時中元彼のことを考えているわけではない。
楽しい時は楽しいし、美味しい時は美味しい。
けれど、何かの拍子にふっと顔を出すのだ。
忘れよう忘れようと心の中に閉じ込めているのに急に出てきた瞬間、私は子供のように泣いてしまいたくなる。
「分かってるわよ。」
今の返事は流石に素っ気なかったかと思ったけど当の本人は何も気にしていない様子でシレッとしているので私も気にしないことにした。
「まぁ、あんたが辛くない方向に頑張りなよ。」
そう言う舞の優しい所が好きだ。
「うん。」
けれど本人にそのまま伝えるのはなんだか恥ずかしいし彼女もきっと望まないので心の内に秘めた。
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