羊の群れのリバーシ

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「都古、そろそろ起きて」  尚也の声と、コーヒーの匂いで目が覚める。目を開けると尚也は既に着替えを済ませ、マグカップを手にしていた。  残業続きの日々を過ごし、ようやく訪れた休日。土日休みの尚也とはあまり休みが合わない。結婚準備のためと無理を言って休みを調整してもらい、ようやく合わせた休みだ。休日ではあるが体が休まることはない。それでも前進しているのだからと、都古は自身を奮い立たせた。今日は役所に婚姻届と住民票を取りに行く。証人に名前を書いてもらう必要があるため今日入籍できる訳ではないが、いよいよ尚也と結婚するのだと思うと喜びが勝った。  午後には分譲マンションの見学を予約している。住宅ローンを組むなら早い方がいいと決めたのは尚也だ。結婚後も共働きを続ける予定だし、入籍前だけど問題ないだろう。  駅前に建設途中の分譲マンションのエントランスは大理石が埋め込まれ、高級感に圧倒された。通された2LDKのモデルルームの設えも美しく、想像していたよりも広い。今住んでいる1LDKと毎月の支払いがほぼ変わらないのであれば、すぐにでも引越したい。住宅ローンを組むには入籍が条件になる。来月の記念日に入籍を予定しているため、今日のところはローンの事前審査を申し込んで解散となった。  数日後、事前審査に通ったとの連絡があり、入籍後に物件の契約と本審査を行う手筈となった。全ては順風満帆かに思えた。
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