ボン・ブーランジェリー

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「木っ端微塵に、爆発で吹き飛んでしまったんだよ」  彼女の顔は、きょとんとした表情だった。苛々したり、綻んだり、分かりやすい反応の連続だ。 「吹き飛んだって。えっ、どういうこと?」 「パン屋ってさ、早朝の時間帯から仕込みをするだろう?」 「そうね。朝、出勤をするとき、近所のパン屋さんは凄く良い匂いをさせていて何度も嗅いだことがあるわ。美味しそうな匂い」 「うん。パン屋の朝って、仕込みが凄く早い時間じゃないと発酵させたパンをちょうど焼き上げたタイミングで、お店に出したりするからね」 「ええ」 「僕がパリで訪れたパン屋さんはね、実は朝の仕込みのあと、出来立てのパンを棚に並べてる時間帯のときだ。えーと、確か正確には朝9時頃くらいに、ガス漏れで店ごと爆発してしまったんだよ。これは冗談とかではなくて、リアルな話」  彼女は驚いた表情を見せた。 「狭い十字路の角にある店だったから、四方の建物にも爆発の威力は凄まじくてね。建物の向かいに旅行で来てた夫婦の1人が窓際に立ってたんだ。爆風で窓が粉々に割れてしまって、破片を全身に浴びて亡くなったんだ」 「なんてこと」 「爆発の影響は火災も起きて、消火にあたった消防隊員も何人か亡くなったんだよ。凄く大きな火事だった。重軽傷者を合わせても、約五十人くらいは出たから」 「それって、ネットニュースにもなった?」 「なったよ。そこそこ有名店だったし、国際ニュースにもなったからね。『パリ、パン屋、爆発』って検索すれば、直ぐ出てくるよ」  彼女は目を見開いて、はっとした表情を浮かべた。思い当たる最近の出来事を思い出したからだ。
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