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カンカンカンカン!
「206号」
看守が警棒で鉄格子を叩いた。
「ああ?」
聞こえているはずだが、返事が気に食わないらしい。看守はもう一度繰り返した。
「206号!」
「はい」
「面会だ」
オレは、首を傾げた。
「面会だって?知ってるだろう、明日が何の日か」
明日は・・・そう、オレの死刑が執行される日だ。
「もちろん、知ってるさ」
「こんな夜に、いったい誰が?」
「お役人だ」
オレはため息をついた。
「今さら役人に会ってどうなる?追い帰してくれ」
「会わないのか?」
看守は、フンと鼻を鳴らして続けた。
「役人の他にもうひとりいた。若い女だ」
「誰だ?」
「さあな、でもなかなかの美人だった。冥土の土産に会ってみても損はないぞ」
「わかった」
看守はドアを開け、オレに手錠をすると、面会室に連れて行った。
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