フェイズ・ワン

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 検察官は席を立ち、代わって女が座った。 「お目にかかれて光栄ですわ、マコネリーさん」  女は冷たく微笑むと、名刺をアクリル板に押し付けた。 「シュミットです。ジェシカ・シュミット。べシュライバー製薬株式会社の新薬開発部門、治験担当主任です」 「新薬の治験?オレにモルモットになれってのか?」 「ギニアピッグでは既に実験済みです」 「何の(ピッグ)だって?」 「ギニアピッグ。モルモットのことです。動物実験はすべて終了し、これから治験のフェイズ・ワン(第1相試験)に入ります」 「何の薬だ?」 「それは、お教えできません」 「そうか・・・で、そのフェイズ・ワンってのはどんなテストなんだ?」 「新薬の治験は4相に分けられます。フェイズ・ワン(第1相試験)は、少数の健常成人に投与し、などがないかどうかを調べます。フェイズ・ツー(第2相試験)では、少数の患者を対象とし・・・」 「おい、待ってくれ。重篤な副作用って言ったのか?」 「ええ」 「なんでわざわざオレを・・・つまり、死刑囚を使うんだ?」 「通常は、動物実験により安全性を確認したのち、健常成人男性にボランティアを募ります。ですが、今回の新薬では・・・」 「ヤバいってことか?」
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