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九州・事後編
八月二十三日
関門トンネル人道口、県道、国道十号を南東に進み、別府へ行きます。
別府は、大分県中部の海に面した街です。
本州から九州に行くため、関門トンネル人道口を通ります。
その距離は七百八十メートル、通行料二十円でした。
地上に出るとそこはもう九州です。
「いよいよ来た!」と感じます。
西よりのルートを通ると遠回りになるため、県道で宇佐方面に抜けます。
そこからは国道十号で別府へ行きます。
別府市内は片側三車線となりますが交通量も多かったです。
別府といえば温泉ですね。
交番で無料銭湯(ちょっと矛盾した表現)を教えてもらいます。
銭湯はあまり大きくはありませんでしたが、地元の方と自転車旅行の話などが盛り上がり、温泉と人情で心も体も温まりました。
八月二十四日
国道十号、国道三百八十八号、県道を南下し、波当津へ行きます。
波当津は、大分県南部の海に面した街です。
午前中、風連鍾乳洞を見つけ中に入ります。
洞窟の中は、様々な石灰岩が楽しめました。
規模はあまり大きくはありませんでしたが、見ごたえがありました。
鍾乳洞の中は涼しく、秋芳洞のときと同様、汗が冷えて風邪を引きそうになりました。
その後しばらく走ると、日本縦断中最も険しい道となります。
国道なのに一車線(片側、零点五車線)となり海沿いなのにガードレールもなかったです。
さらに驚くべきは坂道の勾配のきつさです。
推定で十一~十二パーセントほどだと思います。
波当津では、地元のかたの家に泊めてもらいます。
旦那さんの話では、菊の花を栽培していると伝えられました。
海の近くなのになぜ花を栽培しているのかを聞いてみると、
「この辺りで漁師は数人しかいない。今の日本の海沿いでは、漁で稼げるところは多くなく、そういうところは幸せなところだ」
と話していたことは印象深かったです。
八月二十五日
国道三百八十八号、国道十号を南下し、宮崎へ行きます。
宮崎は、宮崎県の県庁所在地です。
延岡まではアップダウンがありましたが、その後は平坦で走りやすい道でした。
宮崎では大淀川沿いの公園でテントを張ります。
交通量の多い橋とJRの橋に挟まれた場所でしたが、ぐっすり眠れました。
八月二十六日
国道二百二十号を南下し、志布志へ行きます。
志布志は、鹿児島県東部の街です。
日南までは全国有数のシーサイドラインだけあって、輝く海と南洋植物がとても美しかったです。
日本より南にある外国に来たような景色で、本当に爽やかな気分を味わいます。
日南から串間までは、緩やかなアップダウンが続きます。
このアップダウンは、シラス台地が侵食されたものです。
串間から志布志までは天気が悪くなりました。
志布志は日南線の終着駅です。
昔はこの先にも線路が延びていましたが、赤字拡大のため廃線となりました。
志布志駅で、藤原さんと出会います。
藤原さんは鉄道とサイクリングが趣味で当時すでに、JRの九十パーセントを乗車したと話してくれました。
次の日、藤原さんと佐多岬ロードパーク(佐多岬から数キロ手前の自動車専用道路)の入り口で待ち合わせることにします。
八月二十七日
国道二百二十号、国道二百六十九号、県道を南下し、自動車専用道路佐多岬ロードパークまで行き、そこからバスに乗り、佐多岬へ行きます。
佐多岬は、本土最南端の地です。
海沿いの道に出ると、南国的な風景で綺麗でした。
昼食後は藤原さんとの待ち合わせの三時に着くために、水翔はとてもペースを上げます。
ジョンも驚くペースだと水翔は思いました。
二時五十分にロードパークに到着します。
ここから先は自動車専用道路で自転車は走れないので、バスで岬の入口に行きます。
岬の入口に到着後、数分ほど山道のようなアップダウンを通り、念願の本土最南端の地、佐多岬に立ちます。
残念ながら曇っていて景観は良くありませんが、やっとだ!という思いが全身を駆けめぐります。
疲れはほとんど感じず、やりきったという達成感でいっぱいでした。
北海道から鹿児島までの様々な風景、ときに風や雨に苦労したこと、たくさんのツーリング仲間と出会えたこと、地元の方々との交流、そのひとつひとつがかけがえのない自分の生きた経験なのだと実感します。
長いようで短かった自転車日本縦断もここで終了しました。
事後編
佐多岬からふもとの佐多町まで戻り夜となり眠ります。
八月二十八日
佐多町から北に進み、根占でフェリーに乗り対岸の指宿で自転車を住まいに送ります。
指宿は、鹿児島県薩摩半島にある海沿いの街です。
*
この後、友人・親戚の家に寄りながら鉄道で住まいに帰ります。
次の年の夏、日本縦断では行くことができなかった四国を自転車で一周します。
ジョンとは四国でも会うことができました。
一日平均走行距離
約百十四キロメートル
総走行距離
三千三百十一キロメートル
了
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