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【2】
四月になったある日の仕事帰り。
俺は自宅マンション入り口で、部活だか何だか知らないけど遅くなったらしい愛とばったり顔を合わせた。
「遼くん、これ可愛いし使いやすい! わたし、すっごいお気に入りなんだ~」
愛が俺の買ってやったスマホケースを鞄からわざわざ出して見せながら、嬉しそうにしてる。
「そっか、よかった。愛、水色好きだよな」
何気ない俺の台詞に、愛は意味ありげに笑った。
「遼くんが好きな色だから。──そうだよね? 毎日いつでも目に入るから、見るたびに遼くんと一緒にお店行った時のこと思い出すんだ」
愛が俺の胸元を指しながら話すのに狼狽えてしまう。今日はまさに水色のネクタイだから。
確かに俺は青系好きだよ。もちろん他の色も持ってるけど!
「……愛、その制服似合うな。大人っぽい」
なんとも返しようがなく、というより反応しちゃいけない気がして、俺は意図的に話題をずらした。
小心者なんだよ、どーせ。
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