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 就職してからはあらゆる意味で余裕なくてそれどころじゃなかったとはいえ、ずっと独り身でいいなんて思ってない。  機会さえあれば、って今も考えてるよ。  だから俺は、本当に愛を思うなら突き放してやるべきなんだろう。  不毛な初恋なんて想い出にして心の中に仕舞っとけよ、って笑って告げてやった方がいいんだよな。  十も年上の俺なんかより、同年代のカッコいい男の子のほうがお前に相応しいよ、って。  頭ではわかってる。もう何年も前から。  言葉を失くした俺を気にする素振りもなく、愛はエレベーターの中でも廊下でも一人で喋ってた。  曖昧な相槌を打つだけの俺の顔に、斜め下から視線を寄越しながら。  生まれた時から知ってる、隣の子。  小さい頃はただ『妹』みたいなもんだった。いや、今だって何も変わらない、筈なんだ。  ──その筈、だったんだ。今日までは。                             ~END~
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