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【1】
大学卒業して就職して、早いもんで社会人三年目ももうすぐ終わる。
仕事は休みの土曜日の夕方。
年度末だから仕事はかなり忙しいけど、休みは休みでちゃんと取れてた。当たり前かもしれないけどやっぱありがたい。
俺は学生時代の友達と飲みの約束あって、家を出たとこだった。そこにちょうど帰って来たらしい、隣に住んでる女の子に声掛けられたんだ。
「遼くん! どっか行くの?」
中学校の紺のブレザーとプリーツスカートの制服姿なのはいつも通りだけど、胸ポケットにコサージュ、手には黒い筒。
……ああ、そうか。
「友達とちょっとな。今日卒業式だったのか?」
「そうだよ」
愛があっさり頷く。
「まさかひとりだったとか?」
「ううん、違う。式も謝恩会もママと一緒だったけど、夕飯のお買い物するからってそこのスーパーの前で別れたの」
気になって訊いた俺に、愛は首を左右に振った。
なるほど、さすがにそうだよな。
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