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「ねえ、なんで私たちにはコレが見えるのかな?」  鹿島は僕に問いかけた。その疑問はこれまでに何度も話してきたことで、毎回答えが出ないものでもあった。だけど今日はいつもと違ってその声は妙に静かで、どことなく緊張感が漂っていた。 「何だろう、やっぱりわからないけど……。なんで日曜日だけなんだろうね」  僕の答えはいつも通り『わからない』だ。それにいつもの疑問を加える。これについても何度も話してきた。ただ、六年もの間ずっと変わらなかった立方体の法則は鹿島との再会で変わった。やはりその辺りにヒントがあるのだろうか。 「日曜日の過ごし方に何か問題があるのかな……。ねぇ、岡田君は休日って何だと思う?」  鹿島も僕と同じく日曜日にだけ見えること、そして二人で過ごすことで何かが変わってきていることに着目しているようだった。 「休みの日、やらなきゃいけないことがない日……いや、個人的には何もしない日かな。鹿島は?」 「私は……わからない」  彼女の口から漏れ出た声は白い息とともに冬の風にかき消された。  次の日曜日、僕はこの六年で初めて立方体が現れない日曜日を迎えた。そして、久しぶりに鹿島に会わなかった。
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