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「なんだ、出るじゃん……」  立方体が消失するという事態からちょうど一週間後の日曜日の0時。立方体は何事もなかったかのように現れた。安堵から深いため息がでる。そしてはたと気付いた。僕の空は出たが、彼女の海はどうだろうか。やはり彼女に会うまでは、この不安から逃れられないようだ。  寝たような、寝ていないような夜を過ごし、僕ははやる気持ちを抑えきれず早朝に家を出た。僕が家を早く出たところで彼女が早く来るわけではないけど、彼女も同じように気になって早めに公園に現れる可能性もなくはない。  今日の天気は雨だった。弱くも強くもない普通の雨だが視界は非常に悪い。というのも立方体が雷雨だからだ。立方体は雨や傘をすり抜けふわふわと僕の周りに存在する。稲光がチカチカして鬱陶しい。せめて傘の中に青空を作れれば少しは気持ちも上向くが、目障りでしょうがない。  いつものベンチにたどりつくが、ここで傘をさして立ったまま待つのもつかれるので近くにある屋根付きのベンチへと避難した。  彼女は来るだろうか。いつもと違う終わり方をした先週の日曜日から一週間、常に不安が付きまとっていた。明確に言語化できないが、何かが変わってしまった気がしていたのだ。  そうこうしているうちに時間は過ぎていき、いつもの時間になった。落ち着かない。いつも彼女が来る方向を凝視するが、まだ人影はない。遠くの方まで目を凝らしても、見えない。メールでもして連絡を取れば良いのだが、どうもそういう気にはなれない。
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