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「立方体の中の場所。海が暗いのは空が雷雨だからってことはないかな?」 「……なくはない、のかも」 「もう一回やってみる?」 「……だね。やってみよう」  そうして、先週と同じように僕と鹿島は立方体の動きに集中した。少しずつ、少しずつ近づいていく海と空。  そして、触れた。結果は先週と同じだった。 「消えたね」 「同じだね。まるで何もなかったみたいに消えた」 「うん」  そして、二人して沈黙した。この公園に二人でいる理由は立方体だった。だが、それは既にない。そのことに気付いたのだ。この時間をどうするべきか。  もちろん、いつも立方体のことばかり話しているわけではない。高校生の時のこと、卒業してから今日までの一年半のこと、大学のこと、いろんなことを話している。それでも、僕と彼女が会う大義名分は“謎の立方体”について考えることなのだ。  いや、『なぜ立方体をくっつけると消えるのか』とか『なぜ僕のは空で鹿島のは海なのか』とか『なぜ日曜日だけ現れるのか、他の人に見えないのか』とかとか立方体について話すことはいくらでもある。  だけど、それでいいのだろうか。何かが引っ掛かっていた。なぜ立方体は消えたのか。 ――近付いた、ってことないかな?  ふと、さっきの彼女の言葉が頭をよぎる。
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