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「……ぷっ……あははは」  鹿島が笑った。屈託のない笑顔にさっきまで張り詰めていた何かがとかされていくようで、僕もつられて笑ってしまった。  彼女は目尻の涙をぬぐいながら話す。 「ふふ、何を語っちゃってたんだろう、私。なんか恥ずかしい」  この一週間、溜まりに溜まったモヤモヤが氷解していくのがわかる。鹿島もたぶん同じだと思う。馬鹿馬鹿しくなったのだ。難しく考えすぎた気がする。 「いや、まあ……間違ったことは言ってなかったはずだよ、たぶん」 「やっぱり自分の時間を過ごせないから出るってこと?」 「ああ」 「今は?」 「今は……二人の時間を過ごせなくなったんじゃないかな? そういうメッセージなんだよ、僕たちからの」 「何それ」  彼女はまた笑い、続けて言った。 「一辺二十センチぐらいの立方体だね」 「一辺あたりは二倍だけど……体積が八倍になってるね」 「本当だね。もう、めちゃくちゃ」 「二人でつくる一つの二十センチの世界か」  考えれば考えるほど、考えるのがバカらしくなってくる。 「これってどこかが映ってるのかな? それともここだけの世界があるのかな?」 「なるほど。ここだけの世界っていうのは考えたことなかったかも……」 「ねえ、こんな風にも思えてこない? もしかしたら、いま私たちが生きているこの世界も誰かと誰かと……たくさんの誰かが重ねた世界なのかもって」 「でかい立方体だね。でも、だとしたら人類が人類の時間を過ごすためにあるのがこの世界なのかもね」 「すごいエゴ」  彼女はさっきから笑顔が絶えない。  彼女の顔を見つめ、今日、言おうと決めていたことを思い出す。僕が考えて、僕が決心していたことだ。 「今更だけどさ……鹿島、君が好きだ」
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