俺は今、火星だよ!

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火星までの距離が人類にとって近くに感じるようになったのは、ほんの十年前くらいのことだ。 科学技術が発達し、火星までロケットで一ヶ月もかからずに行けるようになった。それだけではない、安全性の飛躍的な向上、低コスト化も進み、人間はどんどん火星に向かうようになった。 十年前くらいは火星に行って帰ってくるのが精一杯だったのだが、最近になり火星移住の可能性が夢ではなくなってきた。その決め手となったのは、3Dプリンターだ。3Dプリンターは従来、手に収まるような物しか作れなかったが、それが家やビルを造ることも可能になった。しかも、火星にある原料で行うことができるため、地球から物資を運ぶ必要もなく、火星にどんどん建物を造ることができるのだ。 しかし、そんな話もニュースで聞いていただけで、自分ごととは思えなかった。火星に行くのはまだまだ限られた人だけであったし、文字通り雲の上の遥か遠くの御伽噺だと思っていた。 ところが、須賀からのメールを見て、これは現実の話だったのだと改めて思った。まさか知り合いに火星に行った人間がいるとは想像もしなかった。 俺はどう返信しようか思いあぐねていた。聞きたいことは山ほどある。どうして火星にいるのか。何をしているのか。火星の暮らしはどうなのか。しかし、俺はどうしても気になることがあった。 『火星って電波あるの?』 数分後、彼から返ってきた内容に、俺は思わず笑ってしまった。 『火星なめんなよ!』
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