ひと月早いバレンタイン

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「シバ、元の世界に戻って。家族や仲間が待ってるよ。リリスちゃんやベルさんも、シバのこと心配してる」 「でも、それではゆずるが……」 「大丈夫だよ。私の心の中には、神様がいるから。例え魔界であなたがどんなふうに生きたとしても、私にとってはシバはずっと神様だよ。悪魔じゃない。……ずっと、シバのこと信仰するから」  最後は冗談交じりに笑うと、シバも泣きながら微笑みを返してくれる。 「……ありがとう」  どちらともなく手を繋いで、その温かさを確かめた。 「……俺を神様にしてくれてありがとう」 「私の神様になってくれて、ありがとう」  握手だけじゃ、気持ちの行き場がとても足りなくて。  私達はぎゅっと力強くお互いを抱き締めあった。  小麦粉の匂いが胸を締めつける。  きっと家のうどんを見る度に、この可愛らしい神様のことを思い出すんだろうなぁと、少しだけ優しい気持ちになれた。 「元気でね、シバ」  顔を上げ、精一杯笑おうとした私に、突然シバは顔を近づけ唇を奪った。  それはあまりにも一瞬の出来事で、何か反応を示す余裕もない。  シバは唇を離すと、再び神々しく微笑んだ。 「……ゆずる、ずっと愛してる」  こんなふうに甘い囁きで、一瞬にして心を奪ってしまうんだから、やっぱりシバは悪魔だ。
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