ひと月早いバレンタイン

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「シバ!……シバっ」  泣きながらシバの身体に身体を埋め、抱き締めている最中にも、ずっと温かな血は蒸発し続けた。  ハッとして見渡すと、地面の血は跡形もなくなり、服の至るところに染み付いていた血痕も消え失せている。 「もしかして……」  再び勢いよくシバの胸に顔を埋め、祈るようにその心音を確かめた。 「シバ…………」  …………心音どころか、盛大なイビキまで響いている。 「シバ!シバ!シバ!」  思わず何度もシバの頬を叩くと、顔をしかめながら彼は再び目を覚ました。 「…………あれ、なんで……」  シバ自身も何が起きているのか、わかっていない様だった。  起き上がった彼は驚く程に無傷で、血の一滴も流れていない。 「無事だったんだ!」 「びっくりしたー!」  周囲の人達の安堵の声の中、私達は再び見つめ合い涙を滲ませる。 「……呪いが解けたんだよ、シバ」  私にはその理由がハッキリとわかっていた。  呆然と目を見開いているシバに、得意気になって微笑む。 「ルシファー(悪魔)のシバは消えて、私の願いが叶ったんだよ!好きな人と結ばれるって夢!」  勢いに任せて力一杯抱き締めると、やっと彼も理解したように、優しく抱き締め返してくれる。 「……私の好きな人は、あなただから」  
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