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____「お帰りなさいませ、ご主人様!」
リリスちゃんは、相変わらずお気に入りのメイド服に身を包み、トレーを手にくるりとターンする。
「リリス、なんでまだお前がいるんだ」
呆れたようなシバの視線もどこ吹く風で、屈託なく笑うリリスちゃん。
「偵察に来ているんですわ。なんだかんだ言って、魔界神様はあなたのことを心配してらっしゃいますから。……シバ様のことを」
リリスちゃんは、彼のことをシバと呼ぶようになった。
「しっかし、おめえが家に残ってくれて、俺は本当に嬉しいよ」
「っしゃいっす!お父さん!」
二人とも同じタオルを頭に巻きながら、熱い抱擁を交わす父とシバ。
「きゃーん!男同士の絆にママ泣いちゃう!」
母は何度注意してもメイド服を卒業せず、自慢のツケマツゲをバサバサと動かして店を切り盛りしている。
「リリスちゃーん、お冷や三つ!」
「心得ておりますわ!」
母とリリスちゃんの阿吽の呼吸は、娘の私でも太刀打ちできない。
「……かき揚げうどん下さい」
そして、変装した優弥は毎日のように家にうどんを食べに来る。
「俺、ゆずるのこと諦めてねーからな!勝負だ!シバ!」
「じゃあデュエルで勝負しようぜ!」
何故かベルさんもいる。
「かき揚げうどん二丁!」
「っしゃい、かき揚げうどん二丁!」
優弥とベルさんのうどんを、勢いよく湯切りするシバ。
その素早い動きは、最早父よりもプロだ。
「……シバ、本当にうどん屋で働くの楽しいの?」
「もちろんだ!楽しくて仕方ない!」
心底幸せそうに笑うシバを見て、私も言葉にならない幸福に満たされる。
「シバのおかげで店も大繁盛!おめえはやっぱり福の神様だな!」
父の言葉にシバは顔を赤らめながら笑った。
「しゃいっす!はい、神です!」
相変わらず、いろんなことに突っ込み疲れる毎日だけど。
「そうだね。……シバは神様だ」
父の言うように、この可愛らしい福の神のおかげで、私は毎日幸せです。
「シバ!」
私だけの、愛しい神様。
【おしまい】
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