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「へー案外豪華な部屋に泊まってるもんだ」
「……」
「はい、椅子に座って……姫」
患部にシュッとマキロンが吹きかけられた。
「うっ」
ツーンとした痛みが幹部に走り表情が歪む。
「……大丈夫か? 姫様……ごめんな俺のせいで」
「大丈夫ですあの、とりあえず近いです」
顔が近い、近い……近すぎる、キスでもするのかと言う程の近距離だった。
何とか場の雰囲気を変えようとテレビの電源をつけたのだが、この時間の放送には相応しくない内容の番組が放送されていた。
「ディーン愛しているわ……」
「レベッカ……俺もだよ……」
金髪の美男美女が、ベッドの上で裸と思わしき男女が指を絡ませて
甘くすぐったいセリフを言い合ってお互い、口づけを交わしているシーンだった。
「……」
場の雰囲気は変わるどころか、ますます気まずくなって慌てて、テレビを消した。
「すみません!」
「じゃあやってみるか?」
「ひ? は? はい?」
何を言ってるんだこの人は突拍子もない言葉に思わず、素っ頓狂な声を上げた。
付き合っても無いのに、ましてや完全にこちらの片想いなのにそんな事出来るわけないでしょうが!!
「冗談だよ……桃花は本当に面白いよな……どうだ? まだ痛い所あるか?」
「もう、治りましたから…後、あの……出口まで送ります……」
「いいよ、気使いすぎだぜ? 姫様また、明日な……」
いつもの右目ウインクの表情で響は部屋を出て行った。
全く、とんだ恋泥棒め。
「もう」
深く深呼吸をしてベッドの上になだれ込んだ。
そして、しばらくして寝落ちしてしまったのだ
「桃花」
「え?」
また、変な夢を見る。
先程のテレビ番組の内容を完全再現していたのだ。
ベッドの上で二人は指を絡ませて深い口づけを交わす。
「愛してるぜ…桃花」
「私もよ…響」
愛の言葉を囁き合って、くちゅりと唇が合わさる音と吐息が静かな部屋に響き渡る。
「あーもう!また!!」
またなんて夢を見てしまったんだを
もう、夢から欲求不満って言われている様なものだった。
「はぁ…晩御飯食べて……気分をリフレッシュしよう」
二階の食堂に向かう。
その時、廊下でストンと背の高い男性とぶつかってしまった。
「すみません」
顔を見上げると白のトレーナーに
ホテル内なのに紺色のキャップを深々と被り、大きめのマスク姿の不審な男だった。
「気にしないで下さい…大丈夫ですから」
男は、桃花に危害を加えられることも無く立ち去っていった。
「ふぅ……助かった……」
ホッと、胸を撫で下ろした。いや、良かったのか?
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