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「響?どうしたの?」
「え、あ…何でもない」
ゆっくりと動き出す観覧車、二人きりの密室。
胸がさらに熱くなる。目の前の桃花の顔が全くみれないほどにだ。
「響さん、今気づいたんだけど?私、無意識にタメ口聞いていたね?」
「俺達歳近いんだ。躊躇する事なんて何もないさ…」
「うん…わかった、これから今みたいに話すね
響…」
桃花は、はにかんだ表情で愛おしい人の名前を口にする。
「ところで、桃花って、彼氏いた事あるのか?」
「無いよ。」
「へぇ、意外」
「そうかな?私の住んでいた所は、辺鄙など田舎だから同年代の人と接する機会なんて滅多に無かったんだ…響が初めて」
何も知らない、純粋な瞳。
”守りたい”と言う、サディスティックな感情に思考が支配される。
好きになった人間は、どこの誰だろうと関係ない。
ガツガツと攻め込んで、獲物を捕らえる
まるで動物みたいな思考回路だが、男は皆、好きになった人間には本気で狙う。
そう言う、生き物だから。
「今日から俺もあんたのフィアンセだ。よろしくな」
「えええええー!?」
強引に決まった、二度目の婚約。
人生初のモテ期が東京で、イケメンセレブ二人からプロポーズ。
こんな幸運づくしでいいの?運気が生き急いでいる気がする。
いや、そんな事よりも、日本は重婚が許されない国、
いくら著名人でも、法律を簡単に変える事は容易では無い。
色んな感情が入り乱れて、観覧車を楽しむどころではなかった。
「降りよっか…」
「ああ…」
スリリングな初デートは終わりに近づいていた。
アトラクションの電気は消え、人の流れは、退場ゲートに向かう。
「ここ、行こうぜ」
「どうしたの?」
教会風の建物に連れてこられた。
煌びやかな室内の装飾と、ステンドグラスが眩しい。
「桃花、今日はありがとうな、些細な物だけど受け取ってくれ」
「いいの?こんな高価な物?」
「桃花の為のプレゼントだ…」
響の右手をチラリと見た。
薬指に、貰った物と同じ形の指輪がキラリと輝いている。
「お揃いなんだ…」
「だろ?…」
突然、パリーンと音を立てて一枚の窓ガラスが割れた。
「何者だ!!」
辺りを見渡すと、犯人は、すぐにわかった伊織だったのだ。
まさか、ここに来て修羅場展開か?このデートどうなるの?
「藍沢響、生意気なゲス野郎。」
シルバーの拳銃を響のこめかみに当てる。
「わかった!わかった!許して下さい!!王子様ああああ」
伊織は、何を言っても聞く耳を持たない。
「安全装置を外したら…どうなるか…わかってるな?」
「ひぃ!?」
殺気のこもった声、もう、ここで終わりか…
最期が桃花に撃たれてならわからないでもないが
恋敵に射殺されるとは、悔しい死に方だな、そっと目を閉じた。
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