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「大丈夫?」
桃花は、意識を失った響に駆け寄った。
「やり過ぎたか、仕方ない」
伊織は、責任を感じたのか、失神した響をおんぶした。
「乗るぞ」
三人は車に乗り込んだ。
ただ、聞こえてくるのはエンジン音のみで
誰も、口を開くこともない重苦しい空気が流れる。
「ごめんなさい」
心の底から謝罪した。
ここ、最近響にばかりうつつを抜かしていた。
甘い言葉の囁きと与えられる刺激にヘラヘラしていた。
むしろ、銃口を向けられるのは響ではなく、軽率な行動をした自分の方だ。
顔がだんだんと近づいて来る、鉄拳制裁を喰らうんだ…目を瞑って、歯を食いしばった。
「田舎娘の面食いめ…」
「え?」
伊織は、桃花にいつもの小言を囁いた。
ーーちゅっ
桃花の唇を塞ぐ、二人は口づけを交わしたのだ、ファーストキスは日本一のイケメンセレブ
なんて、夢のようだ。
「ふわーあ、何いい感じになってるんだよあんたら!」
響がお目覚めの様だ、見つめ合う二人の様子を見て驚いた顔をしていた。
「全く空気の読めない奴だ。見ればわかるだろうキスしてたんだ」
「は!!勝手に俺のフィアンセにキスすんなって!」
「虚言はいい加減にしろクソ野郎」
二人の小競り合いが勃発、静かな車内は一気に騒がしくなった。
「なんだと!なぁ?桃花!!今日から俺もフィアンセだよな?」
「え、ええええ!!」
断れなくて、強引に押し切られたのだ。
いくらイケメンに弱いからと言って、さすがに二股をかけるほど、愚かではない。
「じゃあ、いおりん」
「何だと!その呼び方はやめろ!!」
揶揄った呼び方をする、響に伊織はひどく腹を立てる。
「大学卒業するまで、どっちが桃花を落とせるか賭けてみようぜ?」
「はぁ?何言ってるんだ!最初から俺の勝ちに決まってるだろ?」
あまりにも、激化する間柄に斉藤も間に入ったのだが、収束する気配が感じられない。
この喧嘩はいつ収まるのだろうか?
しばらくして、ホテルkグランド前に着いた。
「あの、私ここで…二人ともありがとう」
「俺もここでバーイ」
降車する桃花に、続けとばかりに響も降りようとするが、伊織に首根っこを掴まれ座席に引き戻されてしまった。
「お前の行き先は、東京拘置所だ!!」
「わかった!わーったごめん!ごめんって!!」
「では…また明日」
車は走り去っていった、大丈夫なのか心配だ。
「はぁ…振り回された」
今日一日、色々な事が起きすぎた。
上京してもうすぐ、一ヶ月が経とうとする。
この三角関係?の行く末はどうなるのやら?
もう、難しい事ばかり考えたくない…ふかふかのベッドにダイブして、爆睡した。
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