同棲と夢の跡と指輪。

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広いベッドに寝転がっていると、タンスの上に裏返しになっている写真立てに気付いた。 (何だろう…) 桃花は、くるりと表に向けた。 そこには、若き伊織と肩にかかる綺麗なロングヘアーの美女のツーショットだった。 二千十五 八月 二十日と言う日付と筆記体のメッセージが書かれている。 (See you again, Best Girlfriend?) 「また、会おうベストガールフレンド?」 「何かあったか?」 お風呂上がりの伊織が部屋に入ってきた。 「あっいや…昔のツーショットを見てて…勝手に見てごめんね」 「ああ、構わないよもう、昔の事だから…」 その背中と声はどこか、彼女に心残りがあるような気がした。 「もしかして、元カノ?」 「うるさい!早く寝るぞ!!」 部屋の照明は、豆電球に切り替わる。 ベッドは、寝心地がすこぶる良くてあっと言う間に眠りの世界に落ちた。 (これは?夢) 「ねぇ…のおばあちゃん」 遠い昔の、夏休みの夢だった。 「そうだよ…この子はね横…から来た男の子だよ 桃ちゃんと同じ年齢の子だから、仲良くしてあげてね。」 日差しに遮られて、顔が全く見れなかった。 目が覚めたら、伊織にぎゅっと抱きしめられていた。 逞しい身体が、綺麗な顔がぴたりと密着、大接近 「きゃあああああああああああああああああああ」 明朝に、大声を出して興奮モード。 騒ぎを聞きつけた、お手伝いロボとSPが一斉に部屋に集まった。 「何事ですか?桃花殿!」 「え?」 「騒ぎを聞きつけたので、やって来たのみです!ゴキブリの残党ですか?」 個人的な用で悲鳴を上げただけだったのに。 こんな大事になるとは… 「田舎娘のホームシックだろう…皆んな戻れ」 伊織の掛け声で皆その場を去って行った。 「…ごめん…こんな騒ぎになってしまって」 「もし今度、悪夢を見たら俺に教えてくれ…いい事を教えてやる」 「え!!」 「喚き散らすな、またあいつが現れる。」 当の原因は、本人にあるのだが… 何事かも無かったかのように即座に、眠れる伊織が羨ましい。 冴える目を落ち着かせようと秒針の音のみの静かな部屋で先ほど見た夢の考察を繰り広げていた。  (昔、少年…夏) これは、片隅に残る幼い頃の思い出の一幕。 (誰だったんだろう…) ある夏の始まりに現れて、コテージでダンスパーティーに参加して、終わりと共にダイヤの指輪を桃花に託して姿を消した。 そう言えば、桃花はふと思いついた。 指輪をくれたのは、伊織なのかも知れない。 子供ながらにあんな立派な物を用意できるのは そこらの一般の子供では、到底無理な話だ。
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