ようこそ影山邸へ

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「おぼっちゃま…そろそろ開場の時間です。」 屋敷の長い階段を降りてきた一人の従者が伊織に伝言を伝えに来た。 「分かった…」 「?」 「今からキャッスル北館にて君の親睦会を行おうと思う、さぁ案内しよう」 伊織と従者に連れられて北館のパーティールームにやってきた。 会場に入れば、眩しいほどの煌めくシャンデリアに真紅の宝石で出来たテーブル。 そして、金屏風の広い舞台…実に豪華な内装だ。 「すごい…」 席に着くと、ワイングラスに注がれた水を飲み リラックス。 会場に着いて幾分の時間が流れただろう。 「今から夕方四時まで新人 ティーナの親睦会を行なう 皆んな 乾杯!!」 「は?ティーナって誰ですか?」 別人の名前が出てきた。 何事か?誰?と言う感情が出てきてしまいう。 皆が無言で見守る中、思わず叫んでしまった。 「君の事だよ朝比奈 桃花君…これからよろしく! 丁重に扱ってくれ…何せ、俺のフィアンセだからな」 そして、舞台の照明が落ちる。 会場内には一斉に拍手とグラスがぶつかり合う音が響いた。と同時にこちらを見てヒソヒソ話をする者もいた。 (私はフィアンセじゃない!!何なのあの人) 桃花は、恥ずかしさのあまりに居た堪れなくなり。 席を立ち、舞台裏へ駆け込んだ。   「ちょっと今の何なのですか?」 一仕事を終えて、舞台裏でペットボトルの水を飲む伊織に詰め寄った、公開処刑もいい事だ。 「ただの冗談を真に受けてどうするBaby…」 色気も美貌もない辺鄙な田舎娘を誰がフィアンセにするもんかと言いたげな顔で言った。 (フィアンセって言葉どう言う意味か解ってないんじゃ) 桃花は心の中でそう思った 「じゃあ宿題です!!おぼっちゃま!今すぐ手に持ってるスマホでフィアンセの意味を調べて下さい!!」 フフと小馬鹿にした、乾いた笑みを桃花に向ける。 「俺を小学生か何かと勘違いしていないか…フィアンセの意味くらい流石にわかるさ…婚約者だろ?」 やっぱり、こいつは人の事を揶揄って遊んでいる。 これ以上抵抗したら更なる嫌味、悪口更にはマウンティングが繰り広げられるだろう。 (もう相手にするのはやめよう…)  「やぁ…フィアンセ…飲むか?相手いないだろ」 「え?私とですか?」 平均よりも少し高い身長、恐らく百七十五くらいだろうか… 日に焼けた健康的な褐色肌に、茶髪のオールバック 顔の彫りが深くて…エキゾチックでセクシーな顔立ちで、エメラルドの引き込まれる程の美しい瞳の持ち主だ。 それでいて、黒色の高級スーツがとても似合っている。 (素敵な人…惚れそう) 「朝比奈 桃花か…素敵な名前だな…」 イケメンは、ポーッと見惚れている桃花の耳元でポツリと囁いた。 「ひゃっ!!そうですかね…どこにでも居る名前なんですが」 「ぷっあんたって、よく生真面目って言われね?」 「比較的、言われます…」 イケメンの名前はわからないけれどここに居ると言う事は 影山家の関係者なのかも知れない、念の為に名前を聞いておこうと桃花は尋ねたが 「名前は何て言うんですか?」 「さぁ?また会った時にそれは教えるよ…」 「え?」 また、はぐらかされた都会の人間は冷た過ぎる。 いつのまにか、顔から一粒の涙がツーと伝う。 帰りたい… 故郷に帰りたい。 上京して数時間、早いホームシックが桃花の心を襲った。
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