ようこそ影山邸へ

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「あら?あなたは…噂の…」 親睦会の会場を離れて、受付ロビーのソファーに座っていると、目の前に中学生ぐらいの少女が現れて そっと泣いている桃花にハンカチを差しだした。 「ありがとう…ごめんね」 まさか、自分より五つくらい年が離れた子に慰めてもらうなんて まだまだ、世の中は捨てたものじゃないと思えてきた。 かなりの小柄ながらも手足がモデルのように長く、均等が取れたスタイル 童顔で人形の様に愛らしく、美しい容姿 手入れを施された、長いツインテールがとても似合っている。 「私の名前は戸田 蘭子…成嬢女子学園高等部一年生 以後、お見知り置きを…」 「え?あなた高校生なの?」 目の前の彼女と歳があまり変わらない事に 桃花は、目を丸くして驚いた顔をした。 「ちょっと貴方、何その間の抜けた顔は… 大変、無礼でございましてよ…私はこう見えて高校生 先日十六歳になったばかりでございまして。 オーホッホッホッ」 と白のセーラー服から、高級な扇子を取り出して仰ぎながらの高笑い。 その仕草は、まるで一昔前の令嬢を見ているかの様だ。   「おい!ガキ!!クソガキ何でここに来たんだ お前は呼んでないだろう!」 つかつかと足音を立てて、伊織がロビーにやって来た。 「お兄様!!今日はこの方の宴を開くと聞いて …やって参りましたの」 「お前、今日は平日だろ?学校はどうしたんだ?サボりか?」 「まぁ、失礼ですわね…この私がものぐさな訳がございませんことよ。 今日は八日 始業式でしたので午前登校でしたのよ!!」 「そうか…でもなここは、ガキの飲む物も食料もないぞ家に帰って勉強しろ」 「なんですって!!先程からガキ、クソガキと貴方も私に対して無礼を働きますのね!!許しませんわよ!図体がデカイからって調子に乗るのもいい加減になさいませ…この誘拐犯が!!」 伊織と蘭子の喧嘩が始まった。 静かだったロビーは、この二人によって一気に騒がしくなった。   「外、騒がしいな様子見に来たらいつもの二人か…」 「?」 「子供と子供の小競り合いだ…あんたが気にする事ないぜ…ところで、あんたはいつから影山にこき使われるんだ?」 「明日からです…」 「まぁ頑張れよ…話は色々と聞いてるからなら北海道から遠路遥々ここに来たんだろ?」 「そうですね…ありがとうございます」 つい、にんまりした蕩けただらしない表情になってしまう。 イケメンが近過ぎて、美しすぎて… 胸がドキドキと高鳴って、止まらない。 「影山にいじめられたら、俺に言ってくれよ、いつでも力になってやるからな…またいつか何処かで」 青年は、爽やかな笑顔で颯爽と去っていった。 「あの!!…行っちゃった…」 いつの間にか、コートの胸ポケットに 藍沢 響と言う名前と連絡先が書かれた一枚の名刺が入れられていた。 「藍沢響…住所も電話番号も教えてくれるなんてさっきは適当はぐらかされたのに…もしかして私に惚れた…まぁ、あり得ないよね…」 なんて、自意識過剰。 でも、覚えておきたい素敵な名前に綺麗な顔。 そして、どこかの誰かさんとは違い人を傷つけない爽やかな言動と色気のある男らしい声。 (ああ、愛おしい…) 今度、会った時また話がしたい。 いつかまた何処かで、か…
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