ようこそ影山邸へ

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なんだかんだで… 桃花を歓迎する親睦会は無事?に幕を下ろした。 時計を見ると夕方五時、随分と長い時間のパーティーだった。 「フィアンセ…今から君がまで寝泊まりする部屋を案内する」 「来月?どう言う事ですか?」 「事情は明日説明する伝染とりあえず今から 真近くのホテル kグランドホテル東京に向かうぞ」 「はーい」 桃花はしぶしぶ伊織の後に着いて行った。 キャッスル影山を出て、徒歩数秒程 目と鼻の先に見えたのは、群を抜いて高級そうな高層 ホテルだった。 「凄い…大きい」 桃花は思わず声を出してしまった。 「今日からここが君が来月まで寝泊まりするホテルだ…言っておくが… 例えフィアンセにどんな事情があっても二月を迎えたら強制退去だからな」 「は?何それ?」 思わず、素っ頓狂な声をあげて、雇い主の伊織にタメ口を聞いてしまった。 「何か質問があるのか?」 何気ない顔で、さらりと言う。 「私、思うんですけど…来月ってちょっとシビアじゃありません?」 「はぁー何を言っているんだ…アパートは影山家御用達の不動産で契約、家賃全額補助、家具家電代も補助の永久保証付き…何か文句でも?」 「特に無いです…」 寧ろ、かなり優遇されている。 こんな企業があればアルバイトはもちろん皆、従業員になりたがるに決まっている。 たしかに方面での不安もあったが、 その問題を抜きにしても、一ヶ月でそんなに家が簡単に見つかるのかどうか。 「でも…そんな簡単に決まりますかね?ましてや東京の中心部で…」 「大丈夫だ…明後日、青山にある影山 ロイヤルハウスに連れて行く…そこで家探しだ」 また、爽やかな顔をして首を縦に振る いや、不動産屋に行っても家が見つからなければ無意味なのでは?とツッコミを入れたかった。  「朝比奈様…お部屋の用意が出来ました」 一人のフロント係が、桃花に声をかけた。 「はっはい…」 「では、お荷物を部屋までお持ちいたします…部屋は三○一号室となります」 部屋のカードキーを受け取って、ホテルマンと共に部屋まで向かう。 エレベーターを降りてすぐの場所、三○一号室と書かれた扉 ホテルマンが早速、鍵を開ける。 部屋に入るとそこは、東京の夜景を一望出来る大きな窓。 二人分のキングサイズのベッドに、 かなりの大型テレビ、何人もの人間が腰をかける事ができる気持ちよさそうなふかふかなソファー。 「素敵…」 まるで別世界。 高級ホテルの一室を、一ヶ月限りだが独占出来るなんて思わなかった。 「何かございましたらフロントまでお願いいたします、それでは…ごゆっくりなさいませ…」 深々とお辞儀をして、ホテルマンは部屋を出て行った。 「凄いな…今日のイケメンと言い…ホテルと言い…東京に来て良かったな…」 と、心の底から思う 浴室やルームサービスのメニュー表、テレビの番組一覧を見た。同じ国でも住む地方によって街並みは勿論、テレビ番組等にこんなに差があるなんて。 軽くカルチャーショックを受けた。 「?誰だろう…」 一人ではしゃいでいると、突然、スマホの着信が鳴った。 「もしもし」 「俺だ」 相手は、伊織だった。 「何か用ですか?」 「君は、生粋の田舎娘だからあまりはしゃぎ過ぎて 明日の業務に支障をきたさない様に…もし遅刻したら…ホテルから早期退出、一ヶ月タコ部屋生活だ 覚えておく様に」 「何なのですか…私は、もう子供ではないのでホテルの部屋ぐらいではしゃぎませんって」 何故、こんなにも生意気で何でもかんでも上から目線でもの言う態度なのか… 顔は端正で王子を思わせる上品なルックスなのに 傲慢すぎる性格のせいで大きく損をしている。 「君には、明日、急遽馬の世話と厩舎の清掃をしてもらう事になった…明日朝の六時に集合だ」 「は?ちょっ」 抗議は虚しく、電話はすぐにプツリと切られた。 朝六時に出勤…こんな真冬の寒い時期なのに… ただでさえ、朝が苦手な桃花は、早朝に起きる事ができるのか…人使いがとんでもなく荒い男だ。 「この!!歩くブラック企業め!!」 渾身の力を込めて、何も音がしないスマートフォンの画面に声を張り上げた。
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