アルバイトと東京と好きな人と

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 休憩のランチタイム  ゾロゾロと仕事仲間が集まって来た。 「はぁー何て事を……」  桃花は、憂鬱な気分だった。  普通ならラッキースケベと喜ぶべき所なのだが?  相手は、性悪王子の伊織だ。  今度から田舎娘ならぬ変態娘と呼ばれるかも知れない。  タイミングが良いのか悪いのか、伊織も食堂に顔を出した。桃花と向かい合わせに座る。 「あの先程は申し訳ございませんでした!  田舎娘と呼ぶのはまだ許せますが……変態娘と呼ぶのは」 「かまわない…俺も悪かった」 嫌味や毒が飛んでくるかと思いきや ”え? それでいいの? ”と思うくらい  話はあっさりと終わった、一先ずホッと胸を撫で下ろした。  ご飯を食べている最中、ふと端に避けてある 野菜サラダと目が合った。 「もしかして野菜嫌いなんですか?」  何気ない感じで聞いてみる。 「別に俺は野菜は最後に食べる主義だからな」  どこか、言い訳を探している様な顔をしている。 見目秀麗だが、子供みたいな好き嫌いがあるとは 誰しも、些細な欠点の一つは抱えているものだ。   「ティーナ…再来週の土曜 湘南に別荘に共に来ないか?」 「えっはい!今の所空いてますよ」 (へぇー別荘か一度、生で見てみたいな…)  でも、何故あえて真冬の時期に湘南に行くのかが疑問なのだが。  別荘がどんな感じなのか…貴重な体験をこの目で収めたいと言う好奇心が勝った。 (まぁ、御坊ちゃまだし…繁忙期に行くと事件に巻き込まれかねないから…今の閑散期に足を運ぶのだわ) 「先に言っておくが……今回は俺とティーナの二人きりだ。」 「え?」  驚いた、二人きりの外出ってSPの斉藤達が黙ってはいないはずでは? 「絶対に斉藤達に今回の事は伝えないでくれ」  しかし、伊織からは一方的な口封じをされる。 まぁ、”付き添いは、いらない”なんて言うものなら SP全員にから反対どころか、外出禁止令が下される事もありえる。 第一に、ガードの硬いキャッスル影山を無言で外出なんて出来るものなのか…?    「ふー…疲れた…」  仕事とデート服の買い物が終わり、ホテルに戻る帰り道。 「よっ…お疲れさん桃花ちゃん」 桃花は、何者かに突然肩をポンっと叩かれた後ろを振り向くと、桃花の想い人が立っていた。 「わっきゃっ!!」 歩道の段差に躓いて転けた。 ああ、恥ずかしい好きな人の前でこんな醜態を晒してしまうなんて… 「大丈夫か?ほら、手貸してやるから立てるだろ」 「はい」  響が差し伸べてくれた右手を取って、立ち上がったがタイツの右膝部分に大きな穴が空いた。 「大丈夫か?これは…看病が必要だな…」 え? 響によって、軽々と体が持ち上げられた。 なんと、道の真ん中でお姫様抱っこをされているのだ。 「あの私一人で歩けます」 「大丈夫じゃ無いだろう…あんたの部屋行こうぜ?」 「えっええ……」 ホテルでまさかの二人きりの?  え? もしかして…いや、ダメだ、これ以上の事は考えるな…あんな事が起きる訳が無いのだから  怪我の治療をしてもらって、おさらばよ。 顔を見ると鮮明にあの夢を思い出してしまう。  頭の中はあんな事やこんな事ばかりで情報の大混乱中。 バクバクする心臓の鼓動を抑えて、お姫様抱っこの体制でホテルの部屋へ向かった。
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