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第三話
「ただいま~」ご機嫌な声が響き渡る。
「お帰り、何か良い事があったのかい」彼女の父親の声が家の奥から聞こえる。
「ちょっとね。パパ、また仕事?」リビングに入ると、父はノートパソコンに何やらプログラムを打ち込んでいるようであった。そのパソコンから何やら配線が伸びていて、その先は小さな黒猫の縫ぐるみに繋がっていた。
「ああ、お前のアシスト用のロボットを作っていたんだ。もう少しで完成する
よ」会話を続けながらも、父は手を止めないでキーボードを叩きつ続ける。彼女は、父親の為に冷蔵庫からアイスコーヒーを出すと、氷を入れたグラスに注ぐと、パソコンから少し距離を置いて机の上に置いた。父は笑顔で、気持ちを表した。
「ふーん、可愛いね、名前は?」彼女は両手で頬杖を突き少し微笑みながら、黒猫をじっと眺めた。黒猫は両目を瞑ったまま固まっている。
「名前か・・・・・・・、考えて無かったな・・・・・・・、そうだな、お前が名付けるといい。お前の相棒だからな」手を止めてコーヒーを一口含んだ。夢中になってプログラムを打ち続けていたので、何も口にしていないようであった。
「私が付けても良いの?えーとね・・・・・・・・・・、黒猫だから・・・・・・・・」彼女の頭の中を色々な名前の候補が浮かんでいるようであった。
「エレ!エレがいい!ハワイの言葉で黒!」
「安直な名前だな・・・・・・、まあ、いいか。名前なんてなんでも・・・・・・・」言いながら彼は、キーボードを打つ続けた。「よし終わった」黒猫の体から、コードを抜き取った。
エレは命を吹き込まれたようにゆっくりと目を開いた。
「こんにちは!エレ!!」
「こんにちは、あなたが私のご主人さま・・・・・・・ですか?」エレの声は渋い男性の声であった。その視線は父に向いていた。
「えっ!この子喋れるの!?すごい!」美保は驚きのあまり体を前に乗り出した。
「ああ、アシスタント用のロボットだからな。意思疎通が出来ないと不便だろう。お前のご主人様は俺じゃない、こっちだよ」父は、娘を指さしてから、コーヒーを飲んだ。
「えっとね、私の名前は美保よ、月子って呼んでね!」彼女の名前は月子というらしい。
「じゃあ、よろしくな月子!」黒猫エレの声は相変わらず渋い声であった。
「って、ため口かい!」月子は思わず突っ込んだ。
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