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1/ 宅配便
――― ずっと、満たされたかった。
幼い頃からいつも一人ぼっちだった。外で遊ぶ同年代の子達の声を聞いては寂しくて自室の隅で一人で泣いていた。元よりかなりの人見知りで話しかける勇気なんてなかったし、話しかけられても相手から求められているような返事をうまく返す事が出来なかったので気付けば俺はいつも一人だった。
大人になれば何か変わるだろう、そう思っていたが大人になっても特に何も変わらなかった。複数の友達と楽しげに話しながら通り過ぎていく同年代の人達を見ては一人どこか胸が苦しくなる、そんな毎日を過ごしていた。
そしていつからか俺は上手く食べ物が食べられなくなっていた。食べればこの寂しい思いが満たされるような気がしてずっと食べ続けていたが、いつからか周りの視線が気になりすぎて食べれなくなっていた。これ以上食べて少しでも見た目が変わってしまったら周りからの視線が変わり、今まで以上に生きることが苦しくなってしまうような気がしたのだ。しかし食べようとするのはやめられなかった。その為食べ物を口に入れて、その食べ物が喉を通った時にトイレに駆け込み全てを吐き出すようになった。口に手を突っ込んで全てを吐き出した。吐き出している時はいつも苦しくて惨めで、涙が止まらなかった。
「 ゔっ、げほ…っ、うぅ…っ」
どうして俺ばっかりこんなに辛いのだろう。いつになったらこんな辛い日々から抜け出せるのだろう。もう終わらせてしまってもいいんじゃないか、どうせ誰の記憶にも俺なんて1ミリ足りとも残っちゃいない。そう思うと余計苦しく、辛くなってくる。
「…もう寝よ」
どんどんと止まらなくなってきそうな暗い想像をシャットアウトしようと俺は吐瀉物を流し、立ち上がってトイレを後にした。
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