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――― 目が覚めた時刻はお昼過ぎだった。
もう既に午前中の授業は全て終わってしまっている。
「……はぁ、」
スマホを枕元に置き、上体だけを起こす。
同時に口から出たのは溜息だった。
また一日を無駄にしてしまった感が拭えない。普通の奴ならバイトに行くなり、大学に行くなりしているのだと思うと何もがんばらずただ怠惰に眠りこけて午前中を過ごしてしまった俺が本当にどうしようもない奴なのだと思い知らされる。
とりあえず午後の授業だけは受けに行こう、そう思い俺は起き上がった。窓の隙間から漏れてきた光が目に入って頭が痛くなる。
どうにも陽の光は苦手なんだ、昔はそこまで苦手じゃなかったはずなんだけど。
頭を軽く抑えながら洗面所へと向かう。
その時、ピンポーンとよくある家庭用インターホンの音が部屋に鳴り響いた。
「あー、俺なんか頼んでたっけ…」
俺は出るのが面倒くさかったので居留守をしようと思いそのまま洗面所へと向かおうとした。しかし、足が止まった。インターホンが永遠と鳴り続けていたからだ。普通は一、二回やったら帰るだろう。全員が出るまで鳴らし続けていたらさすがに苦情が来そうだし。結局、俺はあまりにもうるさかったので仕方がなくドアの方へと向かうことにした。
扉の覗き穴を覗いてみたらそこにはやけに容姿が整っている配達員がいた。少し色の落ち着いた金髪、ミルクティーカラーというのだろうか。少し派手な髪色に同じ色の瞳の色。ハーフか何かなのだろうか、年は憶測だが同年代。やたらと派手な容姿で配達員という仕事が似合わないその男は涼しい顔でインターホンを鳴らし続けていた。出なかったら帰ればいいものを…この男は全ての住人にこのようなことをしているのだろうか。
俺がそんな風に考えている間もインターホンの音は鳴り止まない。まるで俺がいるのが分かっているかのように永遠に鳴り続けている。あまりにもうるさいと近所迷惑だから、と俺は意を決してチェーンを掛けたまま扉を開けた。
「あ、やっぱり…シロクマ急便です!お届け物をお届けしに来ました!」
チェーンの間から顔を覗かせながら爽やかな笑顔を浮かべてそう告げたそいつは太陽のような男だった。覗き穴で見た時から薄々感じていたが…やっぱり苦手なタイプの人間だ。
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