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何で、俺の苗字を知っているんだろう。
紙に書いてあったからか…?
というかそもそもこの状況はなんだ。
陽キャ配達員に組み敷かれて耳元で囁かれているとか、状況が謎すぎる。
俺はこういうやつには余裕ないところを見せてはいけないと思い、何事もないかのように配達員に尋ねた。
「……人に聞く前に自分が名乗るべきだろ」
俺がそう言うと配達員は何がおかしかったのか楽しそうに笑った。
何だこいつは。何がおかしいのだろうか。
「ははは、そうですよね。すみません。
会えたのが嬉しくてつい…僕は早川 優成(はやかわ ゆうせい)といいます。僕、ずっとあなたのことが気になっていたんです。」
…気になっていた…?
俺はこんな陽キャと会った覚えなんてない。
陽キャとなんて無縁な生活をしているから会ったなら覚えているはずだ。
こいつは一体何なんだろうか。
「僕は君と大学が一緒なんですよ、なので君のことは知っていました。何だか消えそうで、儚くて、手首なんて握ったら折れちゃいそうで……」
早川、と名乗ったそいつは俺の手首を握ってきた。そして自身の顔に俺の手を当てて小さく笑った。
「ずっと、触れてみたいなと思っていたんです」
早川は空いていた方の手で俺の頬に触れる。
そしてそのまま手を滑らせて、首筋に触れた。
「…っ!」
その瞬間俺はパチン、と握られていない方の手で首元に触れていた手を叩き落とした。
「…ふ、ふざけんな…っ」
手を叩き落とされた早川は一瞬きょとん、とした顔をした後愉快そうに顔を歪めた。
…こいつは、正直陽キャの中でもダントツで苦手なタイプだ。人の反応を楽しんでやがる。
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