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プロローグ
タンッ!
「っと…今日は依頼が多いんだよな…」
ここは路地裏、目の前には鼻のあたりを撃ち抜かれた死体。
ん?僕?僕はヴェイル·ミル。しがない暗殺者だよ。え、こんな時代に暗殺者なんかいるわけないって?いるんだなぁ、これが。僕がそうだし。
まあ、今何やってるかと言うと、本日2件目の依頼をこなした所。
…一応色々誤解が生まれそうだから言っておくと、僕は理由を聞いて、正当な理由がないと仕事はしない。殺人鬼とかサイコパスとか言わないでね。…とか言いながらもこの世界、意外と腐った野郎が多くて笑える。今日3件も依頼あるんだよ?下準備と調査に5日かかったよ。
「さて、次は…ここか。」
とりあえずさっさとこの場を離れるとしよう。証拠?残すわけないでしょ。足跡はおろか、指紋、弾丸も残さないし、防犯カメラに映るなんてもっての外。
で、路地裏を選んだ理由は、見つかりにくいのと、入り組んでてバレにくいから。
「よし、行くか。」
次は別の依頼。
だいたい僕は依頼は一瞬で終わらす。相手にとっちゃ、気づく間もなくいつの間にか死んでた、なんてザラだと思う。
ちなみに、狙われた相手はほぼ確実に殺されるため、僕は二つ名まで付けられて莫大な懸賞金も掛かってる。
で、次の場所に移動する。ん?移動方法?バイク。それでも防犯カメラにすら映らない。どうなってるんだって?暗殺者なんだから、どうって事ないよ。
…ってのは嘘で、正確にはハッキング済み。まあ、バイクも改造してパソコンの機能付けたのは大きかった。
見えなくさせるのは数秒ぐらいでいいから、下手な被害もない…はず。
まあ、本当は気配を薄くするのはできるんだけど。
「次の奴は…ああ、詐欺で500万騙し取った上に交通事故に見せかけた轢き逃げ…ね。警察がいるのにあれ、交通事故に見せれるのかな。車が無いってのに。」
馬鹿な人もいるものだよね。
余談だけど、たまに警察からも、護衛やら手に負えない犯罪者の狙撃やらの依頼が来ることもある。
…あ、いい忘れてたけど、ここはそっちが想像してるような街じゃない。にほん?とか言うところやあめりか?とか言う所もない。というかこの星に190を超えるほど国がない。30余位かな。一つ一つがでかいだけだけど。
「…っし、ここだね。」
いつも通りターゲットが通る場所に着く。時計を見るに10分早い。丁度ぐらいか。人間だって機械じゃないから、毎日同じ時間に通るわけじゃない。本来なら20分早くても問題ないぐらいだけど、妙に道が混んでたからねぇ…。ま、誤差の範囲内だと思う。失敗したら、返金する上、次に成功しても請求額は半分になる。依頼側としては損はないはず。
で、少し離れて様子を見ていると…
「っし、来た来た…お?護衛がついてるね…二人か。もう…面倒な事を…まあいいや。一瞬で片付ける。」
いかつめの男が二人、守るようについていた。そんなに警戒するんなら最初からするんじゃないよ。
手元に腰から愛用の拳銃を取り、片手で狙いを付ける。
「………Shots。」
タンタン!
護衛の二人の頭にきれいに当たる。ちなみに即死。正確には脳幹を狙ってるからね。
っと、慌ててるな。じゃ、
「…Fall to hell。」
タン!
…よし、任務完了。弾丸を回収して…足跡は…残るわけないか。残らない歩き方してるんだなぁこれが。よし、帰ろう。
漫画とかならこの後、コンビニとかで酒やらタバコやら買って帰るんだろうけど、残念ながら僕は喫煙したこともないし、飲酒もそんなにする訳でもない。たまーにちょっと嗜む程度。というかむしろ、酒には弱い。
で、バイクにまたがって帰る。このバイクもそろそろ変え時かなぁ?もう15年乗ってるし。だいぶ持ってくれてるね。一回タイヤに銃弾を食らったけど、タイヤを替えてまだ乗ってるもんね。タンクにでも当てられてたら爆発してたかもしれなかったよ。
で、いつも通り家に帰る。一人暮らしの1LDK。
「っと…明日の依頼は…お、明日は珍しく無いんだ。」
珍しい。大体いつもあったんだけどなー。さて、明日は…ダラダラするか。
あー、そういえばトイレットペーパーとアルミホイルとシャンプーが切れかけてたね…ドラッグストアとかで買っときゃよかった。ま、明日行こう。
「ふぁあぁ……」
現在5時半。ああ、今日は仕事無いんだった。もうこの時間に起きるのが身についてるからなぁ…
「…ま、いいか。」
どうせ寝てても良い事なんか無いし。
適当に朝を食べて、出かける準備をする。念の為護身用に銃一丁とナイフポーチにナイフ3本を隠し持っておく。何があるか分からないからね。ちなみに、ここには銃刀法違反とか言うのはない。だから暗殺者なんてのができてるんだけど。
暗殺者も僕だけじゃなくて何人かいるし。
ま、買い物先で何か起こったことなんか数える程も無いけどね。今日も特に何も無かったし。
で、ドラッグストアを出て、バイクで帰っていると、ふと思った。
「…あ、久しぶりにあそこ、行こっかな。」
あそこ、というのは、ヒリジ、というパン屋。あそこの塩パンがものすごい美味い。一個120円とかいうちょっと高めな金額だけど、それ相応の味はするし、米粉パンだからちょっと高いのも頷ける。まあ僕、小麦粉アレルギーじゃないからそこは良いんだけど。
急遽行き先変更。バイクの方向を変えて、反対方向のヒリジに向かう。常連というわけではないけど、それなりには通う。この頃は仕事が立て込んで行けなかったからね。ちょっと本気で2000円分ぐらい買ってやろうかと思う。
「いらっしゃいませー。」
あー、この匂い。めっちゃいい匂いする。そんなに大きくない…というか10人も入れないぐらいの店内の壁側の棚に大量にパンが置かれている。トングで取ってレジに持っていく形式。…というか、あのレジの子は見たこと無いね…。バイトか最近入ったか…最近入ったんだね。そういえばここ、バイト雇ってなかったよ。
「どうも…わっ、」
まあ、そうもなるか。30前半の見た目の男が塩パンだけ15個も一気に買うんだもんね。トレーがパンパンだ。パンだけに。
「ご、合計1800円になります…はい、2000円のお預かりで…200円のお返しになります。ありがとうございました〜…」
最後まで動揺しまくってたね。バイクの後ろに付けてある箱にパンを入れ、発進させる。いい買い物をした。
「〜〜♪」
で、家に入ってパンはパンの置き場所に入れておく。と、
プルルル、プルルル、
電話だ。僕に電話をかけるやつといえば…あー、やっぱり?久々の休日が…知らないふりしてみよっか。
ガチャ
「…もしもし、アルスです。」
『偽名はいいから。ちょっと面倒な事案が発生した。』
警察官で警部補のクリスタ。というか僕の偽名しっかりスルーしたね…
『小学校に自爆テロ犯が突撃する可能性があるらしい。うちの署に脅迫状が送られてきた。小学校の方には連絡していない。連絡しようものならすぐさま学校を爆発させる、だそうだ。』
「…はぁ。で?」
『加えて、邪魔しようものなら邪魔する人間諸々吹き飛ばす気でもあるらしい。交換条件は5億とか言う金。』
「……で、どうしろと?」
『狙撃の依頼だ。うちの上層からも依頼を頼めと言ってきた。』
「報酬そろそろ10倍辺りにしてもいいと思うんだ、僕。警察にかなり使われてる気がするんだけど。こっちとしても全部の依頼を受けきれるわけじゃないんだからね?」
まあ、お金が目的で暗殺者始めた訳じゃないんだけど。
『頼むって!こっちじゃどうしょうもないんだよ!』
「…はー…わーかったよ。いつ?」
『今日の…15時辺りらしい。リアナ小学校だ。…また飯でも奢ってやるから、本当に頼むぞ。』
「わかったわかった。はいはい。」
…こんな日常。いや、最初は非日常だった。
ここに放り込まれて日常になった。
言い遅れた。ここは通称、鳥籠。要はバカでかい監獄とでも考えておけばいい。
監獄なわけない、と?
確かに、普通に街はいくつもあるし、国もある。
警官もいれば飲食店もあるし、本屋とか日常生活と変わらない位色んなものもある。
恋愛も普通にできるし、子供も作ろうと思えば作れる。…まあ、僕は別に考えたりしないけど。性欲なんかとっくに枯れてるし。
でも、その生まれた子供も当然外に出ることはできない。外を知らずに檻で一生暮らすことになる。まぁ、だから一応小中高校もある。大学はない。存在を知らない人も多いと思う。
まあつまり、ここは監獄。犯罪者が収監される大きすぎる檻。だから、ここには法が最低限しかない。
そこで言う暗殺者、ってのはいわば処刑人的なものだ。それなら僕は外の人間なのかって?いいや、僕…いや、俺も普通に犯罪者、収監者だった。いや、今もなんだけど。
まあともかく。
貴重な休日を潰してくれたイカれた犯人はとりあえず処す。ワンパンで決めてやらぁ。
とか考えながら、部屋の片隅にある収納スペースから、黒いケースを取り出す。
その中身は、見た目はライフルそのまま。ただし、魔改造を施した結果、最大スコープ倍率×5000、最大4キロ飛ばせる上、弾丸自体もお手製のものがあり、当たった瞬間に中身の火薬が更に爆発するぶっ飛んだ代物。
まあ、使うことないけどね。流石に常人相手には普通の弾使うよ。
建物壊したりする時にちょっと使うね、この弾は。当たって無事にいられる輩はそういないし。前に防弾ガラスを2発でぶち破ったのは流石にビビったけど。乱用はしないようにしてるけど、まあ、爆発と言ってもそんな大規模なやつじゃなくてどちらかというと破裂に近いしね。
まあ、ともかく弾は普通の弾で。
それを背負い、いつも通り、白のフードを被ってポイントまでバイクを飛ばす。
「よし、ここか…あそこがリアナ小学校だね。っし、」
ライフルを準備して、時を待つ。犯人は威嚇のためにか、体に爆薬を付けて、見えた状態で来るらしい。何でそんなことまで分かるのか、不思議でしょうがない。まあいいか。
「…来た。」
少しずつ倍率を上げ、まずはリモコンと思われるものに向かって引き金をカチリ。
バゴオォォン!!
耳栓してるから良いけど、めっちゃうるさい。これ運悪けりゃバレるよねぇ…。まあ、ものの見事にリモコンは完全破壊した。次はてめえだこの野郎。いつも通り鼻を狙って再びカチリ。
ドゴオォォン!!
ものの見事に即死。まあ、正確には小学校から300メートルほど離れたところでお亡くなりになってもらってるけど。流石に小学校の前で殺すのは教育上よろしくない。それぐらいの良識はある。
「っし、任務完了……っと!」
タン!
後ろから気配がした。振り向くと同時に羽織った服の下から拳銃を取り出し、一瞬で相手の鼻に狙いを定めて撃った。
相手からすれば振り向いたと同時に正確な射撃がされたわけだから怖いだろうね。さて、あと4人程いるみたいだね…。
ちなみにだけど、僕は一部を除いて、顔どころか声も知られていない。
フードで顔は割れてないはずのため、声と口調だけ変えて言う。
「あと4人…出てこいよ。」
と、視界の右端、左側の奥の建物の影、その間ぐらいの建物の上から武装した人が3人出てきた。同時に銃を振り、再び一瞬で照準を合わせ、一瞬のうちに撃っては撃鉄を起こし、撃っては撃鉄を起こしして、銃を一回横に振り抜くまでに3人全員の面に鉛玉をお見舞いしてやった。と、
「…流石、といった所か。まさか腕を振りながらあそこまで正確な射撃ができるとは。」
残った一人か。
「そりゃどうも。お前も出てこいよ。」
「いや、辞めておきたいんだがね。僕とて好きでここに来たわけじゃない。来させられたんだ。《半盲の死神》とまともにやり合って勝てる見込みなんかとっくに0に到達してるよ。」
半盲の死神。僕の二つ名みたいなものだ。なぜ半盲と呼ばれるかというと…僕は生まれつき片目と片耳が使い物にならないからだ。
そのおかげでそれぞれの感覚が研ぎ澄まされてるけど。
「…じゃあとっとと帰れ。こちとら休日を台無しにされたんだ。とっとと帰ってゆっくりしたい。」
「そうかい。じゃあ、辞させてもらうとするかな。」
と、物陰から一人の男が出てきて、銃をおいてそのままどっかに行った。
「…ふぅ、よし、後でクリスタに飯奢ってもらおっかな。」
そのままライフルを片付け、帰った。
その後?特に何もなく、ダラダラしてた。久しぶりの一人で待ったりする時間だったからね。なかなか良かった。
で、その日の夜、いつも通り布団に入って寝た。
そこまでは覚えてる。
覚えてるんだけど……
「何なんだここ…」
ゲームやらラノベじゃないんだから起きたら森の中、とか本当に意味がわからないから辞めてほしい。
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