異世界転移して何かよく分からん熊みたいなやつと戦った。

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異世界転移して何かよく分からん熊みたいなやつと戦った。

いや、さっきまで家いたじゃん。え、誘拐?自分で言うのもなんだけど、気配に超敏感で何なら寝てても襲撃受けたら無意識、かつ脊髄反射並みの速度で反撃できる僕が?   いやいや、…えぇ? んでなんか視点が低いね。僕一応身長が172あるんだけど何か…30センチぐらい低い。何、気のせい?だと思いたいね。   「どうなって…ん…だ…!?」 !?声が…なんか高い。え、なにこれ、夢?…あ、そっか夢か。焦ったあぁァァ…で、念の為頬を持ってぐぐっと引いても痛く   「ったっ!?」 あ、痛え。じわじわ痛え。 ……………え、マジ?ちょい待とうか。まず身に着けてるものは…いつものパーカー付きの服…というか私服の上にマントみたいな…なんて言うのこれ?名前は知らないけどちょっと短い黒い布。で、普通にズボン。所持品は銃を撃つとき用の手袋と、護身用のいつもの拳銃、弾は…装填されてる分しか無いじゃん…ん?鞄みたいな奴とリュックがあそこにあるね…何だろう。 …怪しい気配はなし…不審物の確率は低いかな…。どれ、まずはこの鞄を…   ぎぃぃぃ…   パタン   「僕のじゃん…」 僕の銃、38口径の弾がびっしり、おまけに魔改造したライフル、勝手にFSR-264って呼んでるやつもあるし、その弾もある。   「じゃあ…このリュックは…?」 中身は例の塩パンなどの食料でした。塩パンが15個、カ□リーメイトっていう棒状の栄養食が50本、1○秒チャ─ジinゼリーっていう袋タイプのやつが20個。うん?伏せ字が仕事してない?何の話? まあともかく…何で?   それより、どっか鏡みたいなのないかな…服装は変わってないにせよ、今がどういう状態か把握しておきたい。あ、湖発見。 ちょっと離れたところに湖を見つけた。こっちから見るに、それなりに水質はいいと思われる。 一応弾とFSRも持って、リュックを背負って近づき、覗いてみると…     「……え?」 ふと頭を出すと同時に、銀髪に金色の目を持って、狐の耳が生えている中性的な顔立ちの少女が湖の中から覗いていた。   「…は?」 右手を上げると、向こうから見て左手を上げる。少し頭を振ると、向こうも同じように頭を振る。試しに銃を取り出して構えると、向こうもどこからともなく銃を出し、同じように構える。   ……これ僕?   「TSとか洒落にならないからやめてよぉ…」 その上、ご丁寧に獣耳まで生えてくれている。 あざ笑うみたいにどこかから鳥の鳴き声がする。撃ち落としてやろうか。   ふと狐耳に触ってみる。 フワフワしているのは良いんだけど、それよりゾワゾワしてちょっと気持ちが悪い。やめとこう。 …にしても、何しようか。すること無いし、銃の改造でもしよっかな。なんかFSRと一緒に道具もあの鞄に入ってたし。 で、ゴソゴソ30分ほどしてただろうか。 と、   ガサガサガサ…   「ん?」 風とは明らかに違う、何かが通る音がした。念の為銃を抜くが…これ、撃って大丈夫かな?肩壊れたりしない?漫画とかじゃ結構バンバン撃ってるけどこれ、子供の体にはなかなか反動でかいからね?   とか考えていると… ガサガサ…ドン! 真っ赤な毛に覆われた二足歩行する熊と狼を足して2で割った感じの奴が出てきた。うん、ここで確信。     ここ僕のいた世界じゃないね。     こんなやつ見たことないよ。   「はぁ…」 なるべく銃は撃ちたくない。肩を壊せば反撃されたときにどうしょうもなくなるからね。 なら、ナイフで急所を狙うしかないか。あれに脳があるなら…   「せっ!」 刃のほうを指と指で挟んで一本、首の真ん中を狙って投げる。寸分狂わずに命中し…   カラン   そのまま落ちた。   「あー、力も落ちてるかぁ…」 勢いが足りないんだと思う。傍から見ればそれでも目にも止まらない速さの投擲だが、僕なら余裕で見切って反撃もできる。   「ナイフはほぼ意味を成さないね…なら…!」 多分このままほっといたら殺しに来る。今にも飛びかからんという姿勢でグルグル言ってるし。 なら…   「肩無事でいてよ…!」 拳銃を一応両手で構える。いつもなら片手だが、流石にこれで片手でやろうものなら確実に脱臼するか反動で吹っ飛ぶ。   タン!   「グォル…」 当たった。いつも通り鼻っぷしに当てたが、頑丈らしい、まだ生きてる。でも、ダメージも入っている。 と、   「グオゥォオ!」 バッ!とそいつが飛びかかってくる。バックステップとサイドステップで躱す。思いの外速いが、避けられない速さじゃない。というか、よくこの体もついていってるなぁ。考えても体が追いつかない、なんてよくある事だと思うんだけど。 と、   「ガウッ!」   「っ!った…」 狐耳に相手の爪が当たった。いつもは獣耳なんてないから感覚が分かりづらいね…。引っ込め…引っ込め…と念じているとなんか引っ込んだ。片方から血が出てたけど、引っ込ませると痛みもなくなった。よかった。 で、再開。 相変わらず腕を振り回して、地面を砕いたりもし始めたけど、当たらなければ意味がない。そして、地面に手を叩きつけ、顔を上げた瞬間にできた、一瞬の隙を狙い、   「そいっ!」 目の前に銃口を出し、発砲、バランスが崩れて後ろに倒れそうになる直後に背中にまわって首筋、うなじあたりをナイフで一閃。 が、   「ガウアゥッ!」   「っ…!」 ぎりぎりで体勢を変えて反動で叩き潰しに来た。が、好都合。再びバックステップで躱し、こけたところに前に飛んで、後ろからナイフで傷つけた傷口に再び発砲。   「グワアァァァッ!?」   「っそ、しぶとい…!」 しっかし、まだやられない。色々やばいね、というか傷の再生速度がはっきり言って異常だよ。さっき首筋見たらナイフの跡がだいぶ小さくなって出血も止まってた。しかも、こっちはそろそろ肩が痛くなってきた。両手じゃないといけない、ってのもまた。 なら…   「あれは使いたくないんだけどなぁ…」 というか使えるかどうか分からない、FSR-264。しかしこの現状、下手に無駄撃ちするより一撃で仕留めたほうが効率はいい。はー…   「しょうがない…やるしかないか…!」 片手で持ち、あえて肩には当てず、体も当てない。しっかり持ったりもせず、軽く持つ程度に。とりあえず当たれば勝ちだから、これ自体は後ろに吹き飛ばせば体に対するダメージも少ないだろうと考えたから。落ちたりする程度で壊れるようには作ってない。スコープなんか使わず、即死ではなくとも、とりあえず殺すことを最優先に目測で心臓を狙う。   「…Fire!」 ドガアァァン! !   「うおっ!?…こんなに反動やばかったのか…」 FSRが後ろに20メートルほど吹き飛んでいた。やっぱりこっちの弾はヤバいね…一応持ってはいたけど、摩擦と打撲で手が痛い。手袋してなかったらやばかったかも。 ただ、相手は倒した。体の真ん中あたりに至ってはミンチになって焦げてるし、そもそもあれ食らって死ななかったらもはや逃げるしかない。   「さてさて…ん?何だろう、この石。」 あの熊みたいなやつがいるところに、バラバラになった毛皮と、ミンチになってこんがりした肉の中に、赤くて丸い半透明な石が二つ、転がっていた。   「…ドロップアイテム…とか?ゲームじゃあるまいし…」 と、4つほど動く気配を感じ取った。   「何だろう…?またこいつか?…いや、違うね…人みたいな感じ。…敵かもしれない。体勢は整えとくか…。」 いつでも投げれるようにナイフは3本、左手に持ち、威嚇的な意味も込めて右手に銃を持つ。撃ちはしないよ、少なくともこのままじゃ。 で、十秒ほど経っただろうか。そいつらが出てきた。   「!こっち!いたい…た……」   カチャ 「…Freeze!」 拳銃を向け、ナイフを振りかぶって威嚇、相手に停止を指示する。   「どうしt…」 「ここか?ベルフが出たn…」 「二人共?固まってどうs…」 なんか全員固まった。いや、Freezeって動くな、って事だけど…本当に固まる必要はないんだよ?とりあえずそこから動くな、って事だし。   「あ、あー、僕達は敵じゃないから、その…杖?を下ろしてくれると助かるな〜…と…」   「…本当に?」   「も、もちろん。」   「…分かった。」 っていうか、いま杖って言った?こんな短い杖無いでしょ…   「え、えーと、このレッドベルフって君が倒したの…?」 レッドベルフ?…ああ、この熊みたいなやつか。そんな名前なんだね、こいつ。   「あー、そうですけど…?」    「ほ、本当に?」   「…そんなに信じられませんか??」   「いやいや!…って言いたい所だけど、信じ難いよね…だってA3級のモンスターを一人で倒したって言っても…あ、もしかして他に人がいたり…」   「いや、一人です。」   「だよねぇ…他の人見当たらないし…え、本当に…?」 えらく混乱してるね。というかA3級って何だろう?ランク的なやつかな?いよいよ異世界じみてる。   「とりあえず、ステータス見せてもらったらどうなのよ?」   「あ、そっか。君、ステータス見せてくれない?」 ステータス…?ステータスって何だろ…?いや、この世界で言う能力のパラメーター的なやつであろうことは分かるけど…どうやったら見せれるんだ…?何か特別な身分証的なやつかな?そんなの持ってないけど…どうすりゃいい……っ!?これは…   「伏せて!」   「え?」 また気配が出てきた。今度は2匹だ。ただ、さっきのやつとは違う奴。ただ、何か仕掛けようとはしてる。   「早く!」   「は、はい!」 もうこうなりゃナイフでもいい!あそこまで硬いやつはそういないだろ!と、ナイフポーチから二本ナイフを抜き取ったとき、   「ガルル…」「ピュルラルル…」 黄色い狼みたいなやつと灰色の鳩ぐらいの鳥みたいなやつが出てきた。   「っ!アルターウルフとダストバード…!」 と、あの出てきた男の人が何やら言ったと同時に狼みたいなやつが跳んだ。で、   「せっ!」 ヒュッ! 喉元に一発、投げナイフを突き刺すだけで結構簡単に刺さり、倒せた。と、   「ピリュゥイィィー!」 灰色の鳥が変則的な動きで飛び回り、短い間隔で猛進してくる。が、   「遅い!」 回って躱すと同時に回転を利用しながらナイフを命中させ、こちらも撃破。やっぱレッドベルフとかいうあの熊みたいなやつが強すぎたんだね。   「「「「………………」」」」 ん?なんか四人が口開けてぼけーっとしてるね…ああいうのをアホ面って言うのかな。 なんて考えていた。
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